「だからゴメンって!友達と映画見てたから携帯の電源切ってたの」

『んだよ、そういうのは前もって教えろよ』

「今日友達と遊びに行くっては教えてたじゃん!」

『映画見に行くとは聞いてねぇ』

電話越しに聞こえる郷田くんの声は不機嫌そうで私は思わずため息をつきそうになる。少しばかり独占欲の強い私の彼氏さまは自分がかけた電話に私が出ないとこうやって機嫌が悪くなるのだ。

「郷田くんだって私が電話しても出ないことだってあるじゃない」

『バトル中は出れねぇだろ?』

「今日の私だって似たようなものですー」

自分は構わないのに私にはそれを許さないのか、と言いたくなるけどそれはぐっと我慢する。郷田くんは我慢があんまり出来ないタイプなんだろうな、と付き合い始めて学んだ。思ったことはすぐ口に出すし、我が儘だ。まだまだ子供っぽいのだ、彼は。

「ごめんなさい私が悪かったですもうしません出来るだけ」

『…お前、本当にそう思ってるか?』

「え?全然思ってないよ?」

『おい』

冗談だよ、と笑うと電話越しの郷田くんの声もちょっと柔らかくなった気がする。良かった、あんまり怒ってはないみたいだ。電話出れなくてゴメンね?ともう一度、今度は本心から彼に伝える。顔は見えないけれど、郷田くんもきっと笑ってくれているだろう。

『なまえが電話出ねぇとなんかに巻き込まれたんじゃねぇかって心配になるんだよ』

「…うん」

『だからその、なんだ…』

「うん、ありがとう郷田くん」

口うるさく言うのも私を心配してくれてるからだって分かってるから、我慢出来る。私だってまだまだ子供だから、我慢しきれなくて郷田くんとケンカになっちゃったりするけど…。でも愛されてるなぁって思うと不思議と怒りもいつの間にかなくなってたりするのだ。

『お前、今どこに居る?』

「え?今商店街歩いてるよ。ちょうど喫茶店の前あたりかな」

『今から会わねぇ?』

もう日も暮れて来始めたこの時間帯。何で急に?と郷田くんに問いかけると『お前を充電してぇ』って返ってきた。その言葉にちょっと恥ずかしくなって「もう!何言ってるの!」なんて返したら、左右の耳からステレオみたいに郷田くんの声が聞こえてきた。

『「駄目、か?」』

普段あんまり出さないような甘い声で、そんなこと言われたら断れるわけがないじゃない。「しょうがないなぁ」とちょっと呆れたような声を出して、電話を切る。そして私は後ろを振り返った。

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