ぼんやりとした視界が目の前に広がっている。無意識のうちに数回まばたきをすると少しずつだがクリアな世界が見えてきた。目に入るのは真っ青な色。そういえば屋上で昼寝をしていたんだった。昼休みの間だけ、と思っていたが時計を見ると既に午後からの授業は始まっているようだ。今から教室に行くのも馬鹿馬鹿しいし、この授業はここでサボってしまおう。脳内判決が下されたところでもう一度寝ようと横になったところ、普段見慣れない色が私の視界に入ってきた。

緑色と黒色。

その色が見えた方向に顔を向けると、そこにはミソラ二中の番長と呼ばれる人が居た。…同じクラスの郷田、ハンゾウくんだ。彼は体を大の字にして気持ちよさそうに寝ている。まさか隣に人が…しかも郷田、くんがいるとは思わず叫びそうになった。なんとか声を抑えることには成功したけれど、バクバクと心臓が音を立てる。彼は私の焦りと緊張など知らずにまだ夢の中のようだ。起きる気配も無いようだし、私は深呼吸をして落ち着こうとする。何度か深呼吸を繰り返すことで私は冷静さを取り戻す。

そうだ、郷田くんだって昼寝くらいしたくなるだろう。屋上は風通しも良いし寝るのにはもってこいな場所だ。先生にも見つかりにくい私のお気に入り昼寝スポットを私以外の人が知っていてもおかしくない。隣に彼が居るのは偶然…そう偶然なんだ。そう考えたらなんだか気が楽になった。そもそも私に悪い点なんて無いのだから隣で番長が寝ていようが関係ないではないか。


(あ、案外まつげ長い)

開き直ってまた昼寝しようと横になったのだが、一度目が冴えてしまったからか中々眠くならない。郷田くんをこんな間近で見られることなんて早々にないだろうし…暇だし、彼も寝ているのだから少しくらい眺めても構わないだろう。そう思って彼の方を見る。
意外と整っている顔(…と言ったら失礼だろうか)は気持ちよさそうに惰眠を貪っている。まるで子供のような表情に、少し親近感を覚える。番長と言っても同い年なんだし、郷田くんもまだまだ子供なんだなぁ、なんて思ったり。

ぼんやりと彼を見ていたら、ようやく待ち望んだ睡魔が私を襲う。ふわぁ、とあくびをひとつしてからゆったりとまぶたを閉じる。隣で寝ている彼のように、私も惰眠を貪ることにしよう。意識を手放す寸前に、隣の彼の声が聞こえた気がした。
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