こたつとみかんの相性があんなに高いのはなぜなんだろう。というか最初にそれを始めたのは一体誰なんだろう。その人はすごい偉業を成し遂げたんじゃないだろうかと私は思わなくもない。こたつに入ってぬくぬくと暖かさを感じながら食べるみかん。それは普通に食べるものより一層おいしく感じるような気がする。
まあそんなわけで急にみかんが食べたくなって、ついうっかり買い物ついでにみかんを買ってしまったという。ハッカー軍団のアジトにしっかりと設置されているこたつに入りながらみかんを食べたいなぁ。そんなことを考えながら私はアジトへと帰還した。

「お帰りなさいデースなまえ」

「ただいまマジョラム。グンゾウもここ着てたんだね」

「アジトは居心地がいいんだモン」

そう言ってマジョラムとグンゾウは私を迎えてくれた。二人はこたつに入りながらテレビを見ているようで、グンゾウが騒ぎすぎて何度かマジョラムに怒られるという流れを繰り返していた。羽織っていたコートをハンガーにかけ、二人の元へ行こうと思ったときにふと疑問に思った。あれ?いつもアジトに居るはずのヤマネコはどこへ行ったんだろう。どこかに出かけているのだろうか。でもヤマネコはこのメンバーの中でも生粋の冬嫌い、というか寒さに弱かったはずだ。そんなヤマネコが一人でどこか外へ出かけているとは考えられないけれど…。

「ねぇマジョラム。ヤマネコはどこ行ったの?」

「何言ってマース、ヤマネコならここデース」

そう言ってマジョラムが指差した先はこたつの一角。ちょうど私の視界に入らない場所だった。そっと近づいてみるとヤマネコはしっかりとこたつに入っていた。体をほぼ全部こたつの中へと入れ、気持ちよさそうに寝ている。その姿は本当の猫みたいだ。その姿は可愛いなぁと微笑ましく思える。…ちょっと頭を撫でてみたいなぁなんて思ったけれどそこはぐっと我慢だ(起きた後にばれたら怖いし)
それにしても少し困ったなぁ。こたつは四角に出来ているから4面ある。そのうちの3面をマジョラム、グンゾウ、ヤマネコが占拠しているわけで。もう1面の先にはテレビが置いてある。ここに座る…のはグンゾウに怒られそう、だよなぁ。今もグンゾウはすごい集中力でテレビを見ている。私もこたつでみかんを食べるという目標が有るわけで、というか今もちょっと寒いからはやくこたつに入りたいのだけれど。

「マジョラムさんお願いが…」

「却下デース」

「早っ!ちょっとくらい聞いてくれたっていいじゃない」

私はここを動く気ありまセーンときっぱり断られてしまった。マジョラムも結構寒がりな方だとは思うけれど、少しくらい譲り合いの精神的なものを発揮してくれてもいいじゃないか…。はぁ、とため息をついてみかんを片手にどうしようかと悩んでいたところにマジョラムはさも当たり前のようにこう言った。

「ヤマネコのところに一緒に入ればいいと思いマース」

「えぇ!?」

「ヤマネコは小さいしなまえと二人でもこたつには入れマース」

後そのみかんひとつくだサーイ、というものだからすごく力が抜けてしまった。とりあえず持っていたみかんをひとつマジョラムに渡して、私はヤマネコに近づいてみる。…確かに私とヤマネコなら頑張れば一緒にこたつに入れそう、な気はする。けどこれヤマネコが起きた後が少し怖いというか…怒られそうな気がする。けど私もこたつ入りたいし、マジョラムはおいしそうにみかん食べ始めるし。ずるい私も食べたい。
うん、そうだ。このこたつはヤマネコのものってわけでもないし。ハッカー軍団のものだし。私がこたつに入る権利は絶対あるはずだ。そもそも寝てるヤマネコが悪い、ということにしておこう。こたつでみかん、食べたいし。
よし、と心を決めて私はそっとヤマネコの体を端の方へと動かした。ここでヤマネコが起きるんじゃないかと少しヒヤヒヤしたけれど、どうやらだいぶ深い眠りみたいで起きる気配はない。そして人一人ギリギリ入れるくらいのスペースを作ってそっと私はこたつへと足を入れる。冷えた足に包み込むような暖かさを感じる。あぁ、やっぱりこたつっていいなぁと思わず表情を緩ませてしまう。そして目的であるみかんへと手を伸ばした、ときに太股辺りに何かが触れる感触があった。少しびっくりして変な声が出そうになったけれどそこはぐっと我慢した。そっとそちらに顔を向けてみると、寝ぼけているのか寝がえりを打ったのか、なぜかヤマネコの頭が私の膝に乗っていた。幸せそうな顔をして、私の太股を枕にしてぐっすりと眠っているヤマネコがそこに居て。ちょっとくすぐったいけれどこんな顔のヤマネコを起こすのもなんだか忍びないなぁ。まあ少しくらいならいっか。なんて考えてそのまま眠らせてあげることにした。猫っ毛な彼の頭を少しだけ撫でて、私は今度こそみかんを食べるために皮をむき始めた。

「みかんおいしいねマジョラム」

「えぇ、やっぱり冬はこたつでみかんデース」
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