部活が終わり、ひとり廊下を歩く。 明日提出の宿題をうっかり教室に忘れてしまいそれを取りに行くのだ。 そのまままっすぐ帰りたかったが、思いだしてしまったものはしょうがない。それにあの先生は結構提出物にうるさいから、と自分に言い聞かせながら歩く。 空はすでに薄暗くなっていて、教室も明かりは消えている。 もう誰も人はいないだろうと思い、教室のドアを開ける。 「あれ…?なまえちゃん?」 誰もいないはずの教室にいる彼女。彼女は机に突っ伏して眠ってしまっている。 彼女は確か部活には入っていないはずだからこんな時間にここにいるのは不思議な感じだ。 それに彼女の座っている場所は彼女の席ではない。よくよく見ると、そこはオレの席だ。 困ったな、と頭をかく。忘れた宿題は机の中に入っていて取り出すには彼女によけてもらわなければならない。 しかし気持ちよさそうに寝ている彼女を見ていると起こす気になれなかった。 「まったく、どうしたもんかねぇ。」 自分の前の席に座り彼女を見る。 睫毛長いな、とか髪の毛綺麗だな、とか。 普段はあんまり話もしないからじっくり見れないけど、せっかくの機会だしと眺める。 でもそろそろ帰らないと彼女も危ないだろう。夜道は危険だし。 やっぱり彼女を起こそう、と肩に手をかけたとき、彼女が身じろぐ。 「ん…どもん、くん…。」 名前を呼ばれ、思わず手をひっこめた。起きていたのか、と思ったがどうやら寝言のようだ。 寝言でオレの名前を呼ぶなんて、一体どんな夢を見ているんだろうか。しかもオレの机で寝ていて…。 可愛いなぁと思いつつ頭をなでる。彼女がとても嬉しそうな顔をするから、 「無防備ななまえちゃんがいけないんだよ。」 サラサラと流れる髪をあげて、彼女のおでこにキスを落とす。 彼女は目を覚ましたのか、顔を上げて少しボケっとした顔であたりを見渡す。 そしてオレがいることに気がついた。大きな目をさらに大きく見開いてオレを見ている。 「おはよう、なまえちゃん。」 「あ、え…?お…おはよう土門君っ!」 少し笑って声をかけると彼女は顔を真っ赤にしながら勢いよく立ち上がった。 急に立ち上がったものだから椅子がバタンと大きな音をたてて倒れる。彼女はあわてて倒れた椅子を直そうと後ろを向いた。 そんな彼女を見ていると可愛いなぁ、と思う。あぁ、そういえば 「ね、なまえちゃん。どうしてオレの机で寝てたの?」 「へ…?あ、あのっ!ちょっと、自分の机と間違え…」 「るほど近くないと思うんだけどなぁ、オレとなまえちゃんの席。」 うぐ、と彼女が言いよどむ。すでに顔が林檎なんか目ではないくらいに赤くなっている。 それでも一生懸命言い訳を考えているであろう彼女は、本当に、今まで見た中で一番可愛いと思った。 放課後の教室で 「もう暗くなってきたし、一緒に帰ろっか。」 「い、いや!その!そんな土門君に迷惑はかけられないというか、」 「でも夜道の女の子の一人歩きは危険だよ?」 「う…お、お願い、しま、す…。」 お題:確かに恋だった |