背中から伝わる体温。ねぇ、と声をかけてもサトスはあぁ、と気のない返事しかしてくれない。ふらっと彼の部屋に遊びに来たのはいいものの、彼は私が部屋に入ったときから読書に夢中だった。もう1時間ほど経ったとは思うけれど読み終わる気配はない。最初は彼と背中を合わせて私も雑誌を読んだりしていたけれど、段々それも飽きてきた。
手持無沙汰になった私はサトスのほうを振り向く。目線の先にあるのは彼の後頭部。とくに何かしたいわけではないけれど、何もすることもないから彼の頭を凝視する(そういえばあの頭のとんがってる部分ってセットしてるのかな?地毛なのかな?)
ぼーっとしながら、少しずつ私の目線は下のほうへ向く。そしてとある部分で私の視線が下がるのをやめた。


(きれい…)


そこにあるのは彼のうなじ。青紫色から肌色へ変わる部分。すらっと伸びた首筋から私は目を離せなくなった。あぁ、なんて魅力的なんだろう。
いつもサトスを正面から見ることしかないから普段は見ることも無い場所。私よりサトスのほうが身長も高いからこんなじっくりと見る機会なんてそうそうなかった。なんだか不思議な気分だ。そおっと近づいて彼のうなじに顔を近づける。近くで見てもその魅力は衰えることなく、むしろ増していくばかりだ。


「うわぁ!」


サトスが急に大きな声を上げる。そして振り向いて私のほうを向く。首に手を当てて、赤い瞳を大きく見開いて私を見ていた。その赤い瞳に見つめられるのもいいけれど、さっきまで目の前にあった青紫と白に近い肌色のコントラストが消えてしまったのは少し残念だ。


「なまえ…今、何をした…?」


恐る恐る、といった感じで彼は私に声をかけた。その問いかけの意味があまりよくわからなくて私はきょとん、とサトスを見る。
ただ、目の前にあるうなじを近くで見ようと顔を近づけて…


「…かじった?」


自分でもよくわからないままに体が動いてしまったから疑問形で彼の質問に答えを返してしまった。その返答を聞いた彼はみるみる顔を赤くしてまるで林檎のような頬になっている。あぁ、それも綺麗で魅力的だ。今すぐにでもかじりつきたいくらいに。
なんで、そんなことをしたんだと彼に問われた。なぜ、と言われても衝動的に動いてしまったんだから私にもよくわからないよ、としか返しようがない。あぁ、でも一つだけ確かに言えることはある。


「サトスのうなじ、すごく綺麗で、おいしそうだったから。」


ごめんね、びっくりしたよね。苦笑いをして謝罪の言葉を紡ぐ。けれど彼は微動だにせず、首を抑えたまま固まってしまっている、ようだ。顔はいまだに赤いままで。
どうしよう、そんなに驚いたのかな?嫌だったのかな?そうぐるぐる考え始めてしまったけれど、再び私の視線は彼の首筋へ伸びた。あぁ、やっぱり綺麗で、素敵だ。本当、食べてしまいたいくらいに。
サトスもまだ固まったままで動きそうもないし、もう一度だけ、甘噛みするくらいならきっと許されるだろう。心の中でごめんね、ともう一度だけ詫びて私は彼の首筋へ顔を近づける。





ひとかじり、




あと少しで犬歯が首元へ届く、といったときに彼に肩を掴まれてバッと体を離された。真っ赤な顔をした彼が防衛本能を働かせたようだ。
…もう少しだったのに、残念。
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