『サッカー部のイイ男! あなたは豪炎寺?
 それとも鬼道? まさかの栗松!?』



新聞部が発行している校内新聞。今回の見出しはこういったものだった。
その新聞の前に私は立ち止まって記事を読む。確かに女子からの人気の高い二人だとは思う。実際ファンクラブ的なものもありそうだ。
けど、私はなんとなく釈然としない気持ちだ。


「なーに新聞睨みつけてんのさなまえ。」

声をかけられた方を向くと、そこにはマックスが立っていた。手に購買のパンを持っている。あぁ、そういえば今は昼休みだった。私も早く購買で何か買わないと。
私が新聞のほうを指さす。あぁ、とマックスは理解したようだ。
あのふたりってやっぱ人気あるよなーと、まるで他人ごとのように言う。まあ実際マックスにとっては他人ごとなのかもしれないけど。


「私としては、何となくこの結果気に入らないんだよね。」

「へぇ、どうして?」


手に持っていたパンを開け、食べ始めるマックス(話が長くなると思われたのだろうか)
行儀が悪い、と突っ込んでみたら腹減ってんだから別にいいじゃんと返された。まあ本人が気にしなければ別にいいんだけど。



「あの二人確かにかっこいいかもしれないけどさ、かっこいい=イイ男だってことにはならないんじゃない?」

「じゃあさ、なまえの思うイイ男の定義教えてよ。」



まさかそう切り返されるとは思ってなかった。私が考えるイイ男の定義…ねぇ。
顎をつかんでうーんと唸る。その間にマックスは一つ目のパンを食べ終わったようだ。(だって腹減ってるんだからしょうがないじゃん、とマックスは言う)


「案外言葉で表すのって難しいんだけど、イイ男の定義。」

「えー、答えなし?それはつまんないんですけどー。」


ブーブーと擬音が聞こえてきそうな顔で私を見るマックス。つまんないとか言われてもしょうがないじゃないか。
はぁ、と私はため息をつく。

「まあ、この結果が気に入らないのってさ。私サッカー部に好きな人いるからだと思うんだけどね。」

この話はおしまい。じゃあ私購買に行くから、と新聞の前を離れようとする。
はぁ!?とマックスは大きい声をあげて私の肩を後ろからつかんだ。なんだか周りの目が私たちに集まっている気がする。(それもこれもマックスが大きい声なんて出すからだ)


「ちょっとなまえ。僕そんな話初めて聞いたんだけど?」

「そりゃそうでしょう。初めて言ったもの。」

「そういうこと聞いてるんじゃないんですけど。」


ジーっと私の目を見つめるマックス。その目には誰だ、教えろと書いてある。
…案外めんどくさい人にこの話をしてしまった、気がする。これは誰か教えるまで放してもらえそうもない。私の昼ごはんがなくなってしまう。


「…言わなきゃだめ?私ご飯買いに行きたいんだけど。」

「ご飯なら僕のパンあげるよ。なまえが言うまで絶対放さないからね。」


さぁ、吐け。言うんだ、と無言の圧力をかけてくる。あぁ誰か助けてくださいと周りを見渡すと見慣れたピンク色の頭が見えた。
染岡ー助けてーと私は軽く声をかけてみる。彼は私とマックスに気がついたみたいでこっちに歩いてきた。


「…なにやってんだ、お前ら。」

「なまえがさー、サッカー部に好きなやついるって言うから聞きだそうと思って。染岡も気になるよな?」

「そんなの気にならないよね?頼むから私に昼ごはん買いに行かせてください。」


がっしりとマックスに肩を掴まれ逃げ出せない私と、ニコニコと染岡を見るマックス。
サッカー部に好きな奴いんのかよみょうじ!と染岡も大きい声を上げる。あぁ、また視線がこっちに集まるじゃないか…。
というか染岡もマックス側につくわけですか、そうですか…。どこにも私の味方はいないんだなぁと少し哀しくなる。


「ほら、2対1。さっさと答えたほうが楽になれるんじゃない?」

「…かんっぺきに楽しんでるでしょ、マックス…。」

「そりゃあね。今まで色恋沙汰に無縁に見えたなまえに春が来たんだろ?相手が誰か気になるってもんじゃん。」


いい加減腹をくくった方が確かに楽になれるかもしれない。おなかもいい加減空いてきたし答えてしまおうかな。
ただ、これからずっとマックスにからかわれるのが目に見えてるのが少しいやだけれど。
ハァ、とため息をついて私は指をさす。目の前にいる、染岡を示す。
何で俺を指さすんだ?といわんばかりの表情で染岡は私を見る。…これで分かれよ、馬鹿。




「すきなひと、教えたから。」




じゃあね、と私はその場から一目散に逃げ出した。後ろの方からマジかよー!!とマックスが叫ぶ声が聞こえる。
あぁ、勢いって怖い。卒業するまで誰にも――本人に告げるつもりも全くなかったのに。





こくはくとはいきおいなのです






どんな顔で染岡に会えばいいかわからないのに、私たちクラス一緒じゃないか。
…やっぱり言わなきゃよかったかも。








(おまけ)

「何しゃがみこんでんのさ染岡。耳まですっげー真っ赤だよ。」

「…うっせーな、気になる奴からあんなこと言われて平常心でなんかいられっかよ。」

「僕より先に染岡に彼女ができるなんて、なんだかショックなんだけど。」

「か、彼女とか!つかまだ返事もしてねぇ!」

「なに、返事しないの?まさか断っちゃうとか。」

「断らねえよ!あー、でもあいつに顔合わせにくいっつーか…。」

「つかなまえはオッサン趣味かー、豪炎寺と鬼道にピンとこないのもなんとなくわかるなー。」

「俺は老け顔じゃねえぇえ!」
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