オレは教室で自分の机に座り、PSPでゲームをしていた。学校にゲームを持ってきていいのか、と言われるときっとNOと言われるだろうがここは秋葉名戸学園。ほとんどの生徒が自分の好きなものを持ち込んでいるので校則などあってないようなものだ。 「おっ、芸夢今日もやってるねー。」 そう言ってオレに話しかけてきたみょうじ。彼女はPSPから顔を上げないオレを気にすることなく、オレの机に座った。(行儀が悪いなどと言って聞くような奴ではないだろう)そしてオレのやっているゲームを覗き込む。 「それって昨日発売されたやつだよね?」 「あぁ…」 面白い?とみょうじが尋ねる。そこそこだな、とオレは答えた。ゲームの方がひとくぎりついたので、セーブをしてスリープモードにする。そしてみょうじの方を向く。 「で、今日は何の用だ?」 大体みょうじがオレに話しかける時は何かのゲームに行き詰まったー、とかそんな事が多い。今日もやはり同じような内容だった。 「いやあ、先週買ったこれなんだけどさぁ。どうやっても倒せないボスがいてさ。」 そう言ってみょうじが出したゲームは有名なRPGだった。オレもやったことのあるもので、確か2日でラスボスまでたどり着いた記憶がある。 「躓くようなボスなんていたか?」 「ゲームやる人全員が芸夢みたいに上手い訳じゃないんですー。」 むぅ、と頬を膨らましてオレを見るみょうじ。これは失言だったか、と思いつつオレは頭をかく。 「とりあえずメモカ貸せ。そのボスくらいなら倒してやるから。」 「それは嫌!そしたら倒した後のイベント見れないじゃん。」 確かにそれはそうかもしれない。RPGは少しでもイベントが抜けると話が分からなくなるものだった。自分がクリア済みだからその感覚が鈍っていたんだろう。じゃあどうやってそのボスを倒すんだ、とみょうじに聞こうとした時、みょうじがポンと手を叩いた。まるで良いことを思いついたかの様に。 「芸夢さ、今日の放課後暇?」 「暇…というか、家でゲームやるくらいだ。」 そっか、そうだよねーと何かを含んだような笑みを浮かべるみょうじ(何だか嫌な予感がする) 「放課後芸夢の家行ってもいいよね?」 拒否権無しね!と高らかに言うみょうじ。いや、ちょっと待て。何でいきなりオレの家に来ることになるんだ。 「芸夢は家に帰ってゲームしたいんでしょ?私は芸夢にこれのボスを倒して欲しい。ほら、二人の意見を総括すると芸夢の家に行くのが一番!」 ね、いいでしょ?とみょうじが首を傾げる。しょうがないな、とオレはしぶしぶ了承する。 ありがとう!じゃあまた放課後ね、と自分の席に戻っていくみょうじを見ながら、オレは思う。 結局は好きな女の頼みごとなんて断れる筈がないんだと。 君とオレを繋ぐモノ とりあえずみょうじを家に上げる前に部屋を少しは綺麗にしなければならない事を忘れてはいけない。 |