ここ最近、俺にはひとつ悩み事がある。 「あ、鬼道さん!一緒に部活行こうよ!」 …彼女が俺の名前一度も呼んでくれないことだ。 「…なまえ。」 「鬼道さん?どうかした?」 俺がなまえを呼ぶとなまえは首を傾げて俺を見る。名前を呼んでから何も言わない俺を不思議そうに見るなまえ。 「もしかして具合悪い…とか?」 「いや、それは大丈夫だ。」 「それならいいんだけど、さ。」 ほら、鬼道さん早く行こ?じゃないと円堂に怒られちゃうよ。となまえが言う。やはりなまえは俺を名前で呼ばない。 「…なぁ、なまえ。」 「何?どうしたの鬼道さん。」 「何故、俺を名前で呼ばない。」 俺たち、付き合ってるんだろう?と言葉を付け足すとなまえはへ?と間の抜けた声を上げて、それから顔を赤くした。 「あ、いや、その…なんというか、ね。」 あわあわ、と擬音を表すとするとその言葉がぴったりあうんじゃないかと思う。なまえは自分の顔の前で手をブンブンと振り、とても小さな声で言葉を発する。 「…だって、何か恥ずかしい…。」 「…は?」 「今までずっと鬼道さんって呼んでたのに、今更ゆ、有人とか…私には無理だよ!」 今までにないくらい顔を赤らめてなまえはそう叫んだ。…そんなことか、と呟くとあたしにとっては死活問題なの!となまえは言う。だが、俺もなまえに名前を呼んでもらうことだけは譲りたくない。(鬼道さん、だなんて他人行儀すぎる) 「わぁ!き、鬼道さん!何するの!」 俺はその場でなまえを抱きしめる。なまえからは非難の声が上がるがそんなものは無視だ。 「だ、誰かに見られたら…はなして鬼道さんー!」 「名前、」 「え…?」 「なまえが俺のことを名前で呼んでくれたら放してやる。」 ニヤリと笑ってなまえを見る。至近距離にあるなまえの顔は既に赤いというレベルではない。 「…ぅと…」 「聞こえないな、なまえ。」 「〜っ、有人っ!」 もう自棄だ、というようになまえは俺の名前を叫んだ。良くできましたと、俺はなまえにちゅ、と音を立てキスを落として放してやる。 なまえは真っ赤な顔と、涙をためた瞳で俺を睨む。 「き、鬼道さんの馬鹿ー!」 そしてそう叫んで走っていってしまった。 …少しいじめすぎたか、と思いつつまた呼び方が元に戻ったなと思う。 名前で呼んで ちゃんとなまえが俺の名前を呼べるようになるまでこの方法で攻めてみるか。 |