18.36℃
「だるい」
独り暮らしのアパートの家で、誰にも聞こえない文句を言う。
「つらい」
もう1度言うが、やっぱり返事は無い。
当たり前だ。
学校を休んで1人家のベッドで寝ているのだから。
鼻をすすり、熱を測った。
36.7。
平熱が36度以下の私にとって、これは微熱と言えるだろう。
「寝よう」
布団に潜り込むと同時に、着信が鳴った。誰だこんな時に!
画面を見れば、そこには白馬探と書いてある。どうしたのだろうか。
「もしー」
『……誰ですか』
「こら。かけてきてなんだその態度は。今声枯れてるの」
『風邪かい?』
「うん」
『せっかく日本へ帰って来たと言うのに君は……』
「えっ?!まじ?!」
『いないから電話してみたんだよ。今日の放課後、君の家に行く』
「風邪移るよ?」
『勿論、完全防備で』
「え、どんなかっこうで……」
『じゃあ次の授業が始まるから切るよ』
直後、ブツリと音が聞こえた。
相変わらず一方的に切る奴だ。
にしても探が帰って来たのに、風邪を引いてるなんて残念。
でも放課後来てくれるって言ってたし、いいか。
「……寝よう」
ふぅ。とため息をつき、目を閉じた。
ーーーー
「ん……」
枕元で鳴る着信音で目が覚めた。
きっと探からだ。
「はい……」
『着いたよ』
「え、早い」
『普通に歩いてきたつもりなんだけどな』
あぁ、私が寝てたからか。
とか思いながら、今開けるねと電話を切った。
「いらっしゃい」
「久しぶりだね。元気そうで何よりだよ」
「元気じゃないっつの」
「まぁ、寝ててよ。熱はあるのかい?」
「微熱。36.7〜」
「君は平熱が低いからね。知ってるかい?平熱が低いと風邪を引きやすいんだ。食べ物とか生活習慣で変わってくるんだよ。体温が低いことで白血球の働きが弱くなり免疫力が低下するんだ。そうなると血流が悪くなってウイルスに対応できなくなる。だから(以下略」
「うわぁ全然頭に入ってこない説明をありがとう」
寝かせてくれと布団に潜ると、ベッドの上にコンビニ袋を置かれた。
「名前に。どーぞ」
「えっ?!なにっ?」
中を覗くと、私が風邪を引いた時によく食べたくなるゼリーが入っていた。
「わぁ、ありがとう!」
さすが幼馴染み。
わかってらっしゃ……る……
「なにこれ」
「宿題です」
「こん中入れんなテンション下がるでしょーが!!」
探は優しいのか酷いのかどっちなんだ。
まぁ、今日は家事をしてくれるらしいから、許そう。
「じゃあ、僕はお粥でも作ってくるよ」
「ありがとう探」
「名前」
「ん?」
「おやすみなさい」
探が微笑んで近づいて来たと思うと、おでこにちゅっ、と軽くキスをされた。
「ぅえっ?!」
「ほんと、可愛くない声だね。はは」
少しSっ気のある彼はそのままキッチンへ行ってしまった。
今熱を測れば、40度くらいあるかもしれない。
ーENDー
「お粥できたよ。あれ?まだ寝てなかったのかい?」
「寝れるか!!」
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