16.うたた寝
「名前〜!来たぞ〜♪」
「快斗っ?!ちゃんとインターホン押して入ってきてよびっくりするから!」
私の注意などなんのその。
全く反省の色を見せないやんちゃボウズは私の彼氏。
2つ下の彼は学生で、授業なんてまともに受けて無いくせにいつも“勉強疲れた〜”と言いながら私の家に来る。
今日は家で仕事があるから構ってあげられないよ、なんて言っても彼にはやっぱり通じない。
「こんな天気いい日くらいさー、外で遊ぼうぜー?」
「外で遊ぶ歳じゃないでしょ。私は今忙しいの!」
パソコンの画面と睨めっこしながらキーボードを打つ私の横で、お〜怖い顔!なんて茶化してくるからまたむかつく。
相手をしている暇もないので無視していると、膝の上に頭を乗せてソファに横たわった。
真下にある彼の顔を見ると、眠そうにへらっと笑う。
「眠いなら寝ていいよ?」
うるさいし。
「ちゅーしてくれたら寝れるー」
「しない」
えー。と言った彼を無視して仕事に集中。10分経ったくらいでチラリと真下を向くと、暖かい陽気に照らされて、うたた寝をしてた。
すやすやと眠る顔は幼く、可愛くてきゅんとしてしまう。
「ちゅーしなくても寝てんじゃん」
ほっぺにちゅ、とキスをした後少し眺めていると、ちょっといじわるをしたくなってほっぺにぐいっと指を指す。
それはもう、ぐいっと。
「うぅ……」
「……っ。くくっ……」
これがまぁ面白い。
寝ながらも嫌そうに払う快斗にしつこく指をさしていると、抵抗しなくなった。
流石にかわいそうになって、1人ニヤケながらもまた仕事を始めた。
また10分くらい経つと、目がしょぼしょぼしてきてちょっと一息。
暖かい陽気に照らされているのは私も同じで、気持ち良さそうに眠る快斗の顔を見ると私も眠くなってきてしまった。
「夕方近いのになんでこんな天気いいかな〜」
なんて天気に文句を言いながら、少しだけ、と目を閉じた。
ーーーー
快斗との楽しい時間を過ごしていたさなか、ふと現れた上司に、仕事しろー!!と怒鳴られハッと目が覚めた。
「します!!!」
「ぅわっ?!びびった〜……何をすんの?」
「え?」
いい匂いと同時に後ろから声が聞こえ、キッチンの方を向くと目をぱちくりさせながら泣いている快斗の姿。
誰だ私の快斗を泣かせた奴は!!
「どどどどうしたの?!なんで泣いてるの?!」
あわあわしながら近づくと、違う違うと涙を拭いて笑われた。
「玉ねぎ切ってたんだよ」
「え、玉ねぎ?」
まな板を見ると、綺麗に均一に切られた玉ねぎ。
「ご飯作ってくれてるの?」
「気持ち良さそうに寝てたからさ」
にっと笑う彼の片方のほっぺが赤くて、少し笑った。
ごめんね、イタズラして。
ありがとう、料理作ってくれて。
ーENDー
(ちゅーしたことは照れくさいから言わないでおこうかな。イタズラした事は……言わないでおこう)
(名前にちゅーしたことは黙っておこうかな。でも可愛かったし反応見たいし言いてーな。ちょっとイタズラで舌入れた事は……言ったら殴られる……)
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