13.吐息
『今日女子会行ってくるから、遅くなるね』
23歳で女子会ってどうなんだ。
と思いながらも、了解と返事をした。
相手は名前さん。
母さんが海外へ行く事になった時、近所の名前さんに俺の世話を頼んだらしい。最初は飯ん時に通っていたぐらいだったが、いくら近所とはいえめんどくさくなってきて、名前さんと同棲する事になった。
今では何もかもが名前さんの家にある。
好きな人と一緒暮らすのは苦痛でもあり、嬉しくもある。
夜ご飯は用意してあるとのことで、腹が減ってる俺は直帰して飯を食った。
1人寂しくダラダラして、風呂に入る。
ゆっくりお湯に浸かり、のぼせる手前で上がった。
「ただいま〜」
「お?意外に早かったな、おかえり」
「快斗が寂しいと思って〜」
「え、あぁ、まぁな」
帰ってくるなり、べたんと床に座りぼーっとテレビを見始めた。
いつもテキパキしている名前さんだから、どこか違和感を感じる。
体だりーのかな?
「名前さん大丈夫か〜?」
「んー?テレビ見てるだけだよー」
顔を覗きこもうとした時、丁度振り返って笑った名前さんの目はとろんとしていて、肌がほんのり赤かった。
ドキっとしたと同時に、甘い匂い。
「酒飲んだ?」
「女子会だもん、普通飲むでしょ!」
「名前さん酒弱いんだから、あんまり飲まねー方がいいんじゃねーの?」
「そんな飲んでないよー」
へらっと笑った名前さんにため息をつくと、抱っこをせがむ様に両腕を上げてきた。
「抱っこ?」
「違う!立たせてー」
全く。なんて思いながらも、両脇に腕を回し抱きつく様な形で立たせようとしたが、力が入っていない名前さんはずるりと落ちて行く。
「名前さーん。力入れて下さーい」
としゃがむと、俺の両肩に両腕を置かれた。顔が凄く近くて、先程からドキドキしていた心臓の動きが加速する。
俺をただじっと見つめる名前さんの目は相変わらずとろんとしていて、いつもより色っぽい。
甘い吐息が俺をおかしくさせて、麻痺した脳はキスをさせた。
「んっ」
そのまま酔いが移った様に、少し開いた口に舌を挿入。
甘ったるい味が、徐々に俺に移る。
「んんっ……ふ、」
初めて聞いた、鼻から抜けるような甘い声と、甘い味に完全に麻痺。
興奮した欲は抑えきれず、名前さんの可愛さに脳にピリピリと電気が走り出す。
“口内を犯す”とはこういうことかというほど、気持ちよさそうに声を出す名前さんに抑えきれず、服の下に手を入れた。
「んーん!!」
舌が接触したまま出した声は、嫌そうだった。“嫌われたくない”という思いが欲に勝り、手を抜き口を離した。
互いに息が乱れ、1つとなって出された吐息は、甘い匂いがした。
「ご、ごめん……」
「私こそ……ごめん……。今のは、何か意味があるの?」
「あるよ!それは……っ…」
好きだからしたくなった。
でも、酔っている名前さんに言っても……。
「酔いが覚めたら言うよ」
「……私体がだるいだけで、認識できない程酔ってないよ?」
「え、あ……」
確かに。
会話もちゃんと成り立っていたし、肌もほんのり赤いくらいだ。
じゃあ、酔ってたからキスを受け入れたわけじゃないんだ。
「……なんか騙された気分」
「快斗が勝手に泥酔してると思ってただけでしょ。ふふ」
「だよな。……名前さんが好きだからキスした」
「……私も好きだから、受け入れた」
舌が入ってくると思わなかったけどね、と恥ずかしそうに笑う名前さんを抱きしめた。
「ほんとごめん、絶対身体目的とかじゃないから」
「わかってるよ、もう1年近く一緒に住んでて、手出されてないしさ♪」
そういう所も、好きだよ。と耳元で囁かれ、下半身がぴくりと動く。
それに気づいたのか、くすりと笑われた。
「うぅ……ごめん……」
「若いねぇ」
少しだけ酔った名前さんの吐息は、俺にはかなり酔う程に甘く感じた。
ーENDー
「俺も完全に酔いが移った」
「18歳はお酒だめだよー?」
「名前さんから貰うならいーだろ?」
「えー。いいよ……」
そのまままたキスをして、服の下に手を入れた。また、あの甘い声が聞きたい。
普段の名前さんも、酔った名前さんも、全部大好きだ。
「っはぁ、もう、いれていい?」
「んっ……だめ」
「生殺し〜。もう無理だし」
ふふ、と笑った彼女のおでこにキスをし、腰を落とした。
prev|next