08.寸止め




※みんなそれぞれ正体を知っている設定です。




「あ、雨だ……」

「おっ!傘持ってねーの?俺今日持ってきてるから相合傘しよーぜ!」

「ほんとっ?!珍しいね!ありがとう!」


珍しいは余計だと言いながら傘を開いた彼は黒羽快斗。クラスメイトだ。

お気楽者で羨ましいなー。なんて思う。
ある意味憧れ……。


「名前ー!おめー絶対傘持ってきてねーと思ったから持ってきたぞ!」

「げっ。名探偵……」

「新一!ありがとう!えと……どうしよう……」


今傘をわざわざ江古田まで持ってきてくれたのは工藤新一。私の幼なじみ。
快斗の敵だね。

それよりこの状況……どうしようか

最初に誘ってくれたのは快斗だし……
でも新一はわざわざ持ってきてくれたし……


「ざんねーん。もう俺が約束しちゃいましたー」

「でも今日名前と飯食う約束してんだぜ?したらここら辺で飯食えるし、楽じゃね?」

「えっ?!そうなの?!」

「1回家帰ってから新一の家に行こうと思ってたんだけど……確かにその方が楽かも。ごめん快斗」


迷った挙句、新一が持って来てくれた傘を手に取った。
快斗とはまた今度一緒に帰れるし、いいよね。


「ちぇっ。じゃあ今度は俺と飯食いに行こうぜ?」

「うん!」


快斗は新一に睨みつけると、そのまま帰ってしまった。
ごめんね快斗。


「さ、どこ行く?」



ーーーー



「たくさん食べたねー」

「ちょっとそこの公園で話そうぜ。雨晴れたし」


結局近くのファミレスでご飯を食べ、そこら辺の公園で一息。
2人でベンチに座り普通に会話をしていると、なんかもごもごしだした新一。


「あ、あのよ名前……」

「ん?」

「俺らさ、もう付き合いなげーじゃん?俺さ、小さい時から名前が好「あれー?2人でなんでここにいんの?」

「「え?」」


振り返ると、ニコニコしながら近寄ってきたのは帰ったはずの快斗。


「快斗!今ご飯食べ終わって公園にいたところだよ!快斗は?」


俺は偶然ー。と何故か不敵な笑みで新一を見る。それに睨み返す新一。
ほんと、2人はライバル心が強いなぁ。
まぁ、追う身追われる身だから当たり前か。


結局新一が何を言いたかったのかわからず、3人でしばらく喋って解散となった。まぁ3人で喋ったというより2人の言い合いの傍観者だったけど。

そういえば新一、なんて言おうとしたんだろう。


ーーーー


あれから数日後、怪盗キッドから予告状が来たとニュースでやっていたので、暇つぶしに行くことにした。
どんだけ暇人なんだ私。
まぁ新一もいるかもしれないしね。


確かキッドは屋上にいる事が多いはず。

目的地に着き、屋上の扉を開けると柵によりかかり月の光に宝石を照らしているキッドがいた。


「いたー!かーいと♪」

「おっ?!びびった〜……名前ちゃーん!俺に会いに来てくれたのっ?」

「来たよ♪暇つぶしに!」

「暇つぶし……」

「あれ、新一まだ来てないんだね?」

「まぁ、俺が仕掛けておいたトリックがあるからなー♪今はふたりきり〜」

「きゃ!快斗!」


ぎゅぅっと抱き着いて来た彼に抗議の声をあげると、笑顔から一変、微笑んで私を見てきた。


「名前ちゃん?」

「ん?」


目を見て返事をすると、近づいてくる顔。把握しづらい状況に、焦りがうまれる。

「えっ、えっ?!か、快斗……っ?!」

あたふたしていると、互いの息が触れる程に近づいた。


「キッド!!」

「きゃぁっ?!」

「……んにゃろ〜……。タイミング考えろっての」


バンっと大きい音と共に現れたのは、新一だった。


「キッドてめぇ……」

「そう簡単にトリックにひっかかるやつだと思ってなかったけど早すぎ」

「仕返しだバーロー」


話が読めず、唖然と見るばかり。


「寸止めはんたーい!!」

「るせー!先にしてきたのはおめーだろうが!!」

「だってあんなの許せるわけねーじゃん!」

「今自分がしようとした事わかって言ってんのか泥棒!」

「か!い!と!う!だ!」


とりあえず原因を確認しようと、2人の間に割って入った。


「ねぇ、2人でなんの話してるの?」

「「寸止め!!」」

す、寸止め……?

「……今日は1段と激しい言い争いだけど、原因は何っ?まずそこからでしょ!」

「おめーだよ」
「名前ちゃんだよ」

「え。私?」

ポカンとするとまた喧嘩を再開。
もう手に負えません。


「「寸止め反対!!」」


ーENDー


「でもよー名探偵。気づかない奴も気づかない奴だよな」

「だな。俺らの気も知らねーでさ?」

「えっ…やだ2人して睨まないでよ…。私?」

「「鈍感」」

「え、何この急な団結力」




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