06.視線
やっと学校が終わって欠伸をしながら帰っていると、前方に蘭と園子を発見。
その隣にもう1人、女がいた。
誰だ?あいつ。
「あ、コナン君!」
「がきんちょ!」
「蘭姉ちゃん!園子姉ちゃん!」
3人の元に駆け寄り、えっと……と言いながらちらりともう1人の女に目を向けた。
「あぁ、コナン君は会うの初めてだったね!この子は名字名前ちゃん!」
「初めまして、コナン君。名前って呼んで?」
「は、初めまして……名前姉ちゃん」
にこりと笑った彼女は、蘭よりも落ち着いていて、大人びていた。
そのまま俺を先頭に4人で帰っていると、後ろから感じる視線。
どこか背筋が凍る様な視線に、真っ先に頭に浮かんだ名前。後ろを振り向くと、にやりと笑われた。
こいつ……怪しいな。
黒の組織のスパイか……?
正体がバレてるとか……。
未だに感じる視線に、冷や汗をかいた。
「ねぇ、今日蘭の家に遊びに行ってもいい?」
「いいよ!おいでよー!」
げっ。まじかよ……。
逃げた方がいいのかっ……?
「ぼ、僕は博士の家に行こうかな……」
「一緒に遊ぼうよ、コナン君?」
「!!」
この視線……!
やっぱりこいつからだ……。
蘭にもせっかく名前がいるんだから。と押され、結局家にいることになった。因みに園子は用事でパスらしい。
これはまじでやばい展開になりそうだ。
解決策が見つからずそのまま家に到着。
蘭はさっそくお茶を出すからと1人キッチンへ行ってしまった。
案の定名前はあの視線のまま俺の目の前でしゃがみ、微笑んだ。
「ど、どうしたの……?」
「ねぇ、コナン君。あなた……工藤新一「名前ー?ちょっと来てくれない?」
「ら、蘭姉ちゃんが呼んでるよ……?」
タイミング良く蘭が名前を呼び、名前は立ち上がった。
「……ちぇ。惜しかったな」
くすくすと笑いながら蘭の元へ向かう名前に恐怖さえ感じる。
このままだと危ない、と本気で思った。
ーーーー
「あ!もうこんな時間!買い物行かなきゃ!名前、コナン君と待っててくれる?」
「いいよ」
「えっ?!僕も蘭姉ちゃんと行く!!」
「すぐ帰ってくるから、待っててねコナン君」
抗議の声をあげていると、名前に後ろから抱かれ、なす術なく。
蘭は玄関を出てしまい、ついに2人きりになってしまった。
「さっきのお話の続きしよっか」
「………」
「あなた、工藤新一に似てるって言われない?」
「えっ?っと……親戚だからかなぁ……?」
工藤新一でしょ?じゃなくて、似てるって言われないか聞きたかったのか…?
「そっか……。私ね、クールって言われるんだけど…実は子供大好きなのーっ!!」
「え?えっ?!わぁっ!!」
いきなりとびきりの笑顔に変わり、ぎゅぅっと力強く抱きしめられた。
なんだこいつ、俺の正体知ってるんじゃないのか?
「可愛い〜っ!!」
「い、痛いよ名前姉ちゃん……」
「なんか中々蘭ちゃんの前ではこんな風にできなくて……ずっと抱きしめたいの我慢してたの!」
……だからあの視線を感じたのか……。
視線だけは鋭いな……。
「あー可愛い〜っ!!」
ぐりぐりと頬を押し付けられ、こんな奴だったのかと安堵のため息が出た。
「よ、良かった〜……」
「え?何が?」
どうやらこいつ、本当はアホっぽい。
ーENDー
prev|next