04.おはよう
「最近、中々会えないね」
『お前が出張中だからな。しょうがない』
「そうだけどさー」
確かに、今2ヶ月ほどの出張に来ている。けど、同棲していない私達は互いの仕事が忙しく、私が出張に行く前からなかなか会えていなかった。
秀ちゃんは会いたい会いたい言う人じゃないからいつも私から言うけど、今電話で言ってもしょうがない。
でも……
「会いたいよ秀ちゃーん」
『だな』
「ほんとに思ってんのかいっ!!」
『あと1週間だろ?出張終わるの』
「そうだよー!あと1週間我慢すれば秀ちゃんに会えるー!」
『悪い、仕事なんだ』
「……でしょうね」
ムスッとして言えば、まぁでも空けておくからと適当に答えられた。
本当に空けてくれんのかねこの人は。
『悪い、キャッチが入った。多分仕事だから、またな』
「はいはい、頑張ってねー」
私の言葉に少し被って途切れた通話。
悲しい音だけが聞こえて、大きなため息をついた。
FBIだから、しょうがないね
私より忙しいもんね
そう何度も心で唱えて、私も明日の仕事をこなすために気合いを入れて寝た。
ーーーー
「やっと帰ってきたー!!」
2ヶ月の出張も終わり、スーツケースをガラガラと引きながら我が家の鍵を取り出し、鍵穴にさしてガチャりと回す。
誰もいない家にただいまと言いながら何か違和感を感じて、恐る恐る中へ入った。
「えぇえええっ?!な、なにこれ!!」
部屋を見渡す限り、何も無い!!
テーブルや家具、カーテンもいっさい何も無い、ただの空き家と化していた。
さっきの違和感は、玄関にあった靴がきれいさっぱりなくなっていたからであろう。
「え、あ、空き巣?!」
にしては随分大胆な空き巣だ。
とりあえず、秀ちゃんに電話した。
『どうした?』
「空き巣!空き巣が入ったかも!」
『空き巣?取られる様な物あるか?』
「辛辣!!今そんな冗談言ってる場合じゃないでしょ早く来てよおおお!」
『??わかった』
怖くなって1歩も動けずにいると、秀ちゃんが合鍵で家に入ってきた。
部屋を見渡した秀ちゃんだが、どこが?と言った表情。
「ちょっと!!何も無いんだよ?!見て分かるでしょ!」
「あぁ、そういうことか。必要な物は全部俺の家に運んだ」
「……は?なんで……?」
「名前が帰って来たら、俺の家で同棲しようと思ってな。サプライズだ。嬉しくなかったか?」
「……えええっ?!」
嬉しいけどさ!!
嬉しいけどサプライズ下手か!!
恐怖のサプライズだよ!!
嬉しいよ!!
「び、びっくりしたよ……でも、嬉しい!!ありがとう、秀ちゃん」
ギュッと抱きつくと、秀ちゃんも抱きしめ返してくれた。
恐怖のサプライズは、なんとか成功に収まりました。
ーーーー
「ん……起きるの早いな名前」
「秀ちゃん。おはよう」
「おはよう名前」
こんな甘い“おはよう”を言い合えるなんて、なんて幸せな朝だろう。
ありがとう、秀ちゃん。
ーENDー
「なんか焦げ臭いぞ」
「え?ぎゃあ!!魚焼きすぎた!」
「そんなヘラヘラしてるからだ」
「言い方!!」
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