03.指先



「ごめん名前。待ったか?」

「全然!」


新一と付き合って2ヶ月。
告白をしてもらって、幸せを感じて。
私も好きと返したら、ギュッと抱きしめてくれた。
でも、抱きしめてくれたのはその1度きりで、その後の展開は何も無い。
手も繋いだことがない。

付き合う前は両想いが1番の願いだったのに、願いが叶えば叶うほど欲が深くなるが、奥手の私達はなす術なく。


手を繋ぎたいと浮かせるものの、やっぱり勇気がでず、自分の白い息で手を温めた。


「今日は1段とさみーな」

「寒いよね、せっかくのデートなのにさ」


おう、とだけ返事をした彼はマフラーに顔を埋め、両手をポケットに突っ込んでしまった。

あぁ、チャンスを失ってしまった。
両手が出てたからと言っていきなり手も握れず、手繋いでいい?なんて奥手の私には到底無理だから、少し安心もあるけど。


映画館に行く約束をしていたので、そのまま映画館に向かう。
今回見る映画は凄く人気で、新一も私も大好きなミステリー映画。
まだ公開日からも近いので早めに行った。


ーーーー

「え、満席?!」

「すみません……。凄く人気の映画で、完全に満席ではないのですが、座る席が別々になってしまいます。よろしいですか?」


さすがに別々の席は嫌だ。
今回はこの映画は諦めるしかないようだ。


「どうする?新一」

「名前なんか見たいのねーの?」


店員さんが一番近い時間で入れる映画を探し出してくれた。
それは恋愛もので、まぁ興味があった私は新一の許可も貰いその映画を見ることにした。


入った瞬間カップルだらけで少し気まづかったが、私達もカップルだしまぁいいかと席に座る。


「楽しみだね」

「だな」


そんな会話をしているうちに館内が暗くなり、私たちはスクリーンに目を向けた。


ーーーー


「いや良かったね〜!」

「あんなの偶然過ぎんだろ」

「またまた〜!映画だから!」


なんでも理論的に考えてしまう彼にとってあまり納得いかない最後だったようだ。まぁ、そんな理論的なところも好きなんだけど。

ちょうどお昼頃でお腹が鳴りそうな私は新一に昼飯を提案し、2人でどこにしようかとまた寒い外へ出た。


「う〜っ。寒い!!」

「あったけぇ所から出たから余計寒く感じるな〜」


その時、新一の手が私の手にコツンと当たった。


「あっ……」

「うわ!名前めっちゃ手冷てぇじゃん!」


新一にぎゅっと手を握られ、顔に熱が集まる。私の顔を見て新一も自分の行動に気づいたのか顔が赤くなり、手をぱっ離された。

でも、握られた一瞬が恋しくて、新一の指先を勇気を振り絞ってきゅっと握る。


「あ、あの……こうしてたい……」

「あ、えと……おう……」


新一の指先に私の指先を絡めると、新一はギュッと私の手を握りポケットにしまわれた。


「こ、この方があったけぇだろ?」

「うん……」


そっぽを向いた新一の耳は寒さか照れか、少し赤くなっていた。
きっと、2人でさっきの映画を見ていたからだね。こんな甘い気持ちになったのは。

新一のポケットに入っている2人の指先は冷たく、もう少し冷たいままでもいいかな、って思った。

こんな寒い日も、悪くない。


ーENDー

「手、温まってきたな」

「!!ま、まだ温まってない……からもう少し……このままがいい。かな……」

「だっ、だよなっ……!(可愛いすぎだバーロー……)」




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