02.3センチ
「いやぁああっ!それ以上近づかないで!!」
どうやら俺は、名前にあまり好かれていないらしい。
いつも一緒にいんのになー。
好きなのになー。
別にベタベタ触ったりしてはいないんだけど。
青子と3人でいる時は、必ず青子を真ん中にする。
俺と2人っきりの時も、距離を結構空けるし、俺汚い奴みたいじゃん……。
別に今も触ろうとしていたわけではない。ただ名前に課題をやったかどうか聞こうと思ってすぐ傍に行っただけなのに。
あーひでぇ……。
「んだよ、どんだけ嫌いなんだ俺のこと!」
「嫌いじゃないけど、快斗距離近いから嫌!!」
「課題やったかどうかそんな遠くから聞く距離じゃねーだろ!」
遠くからわざわざ、おーい!課題やったかー?!ってか?おかしいだろ。
シカトされたら恥ずかしいし。
って言うと、じゃあ2mは離れてと言われた。2mならいいのか。
好きな奴にはもっと近づきたいが、名前はこれが限界らしい。
嫌がるような事をしたくねーし、今はこれで精一杯。
なんでだろーなぁ。悲しい……。
名前はそのままトイレに行くと言って教室から出てしまった。
「……青子〜……」
半泣きで青子に振り向くと、事情を知っている青子は理解した様で、どんまいと苦笑いしてきた。
どんまいじゃ済まされねーし!!
「ねぇ快斗。今日一緒に帰らない?」
「あれ、でも名前と遊びに行くんだろ?」
「校門まで帰ろ!」
「んだよそれ!すぐそこじゃねぇか!」
「いーから!私と3mくらい離れてね!あと話しかけないで!名前にこの事言わないでね」
「それ一緒に帰る意味なくね?!」
あー俺は青子にも嫌われたのか。なんて思いながらついに放課後。
名前は先に校門で待ってると青子に言って、行ってしまった。
その後青子に指で指示された場所を歩き、これ意味あんのか?と思いながら校門付近まで来た。
名前いねーし。
ちらりと青子を見ると、しーっと合図をした後、指で自分の前を指した。
青子の前を歩けと言う意味か。
無言で青子の前に向かうと、満足そうににやけだした。
ほんとこれ意味わかんねーんだけど。
「あーおこっ♪!!」
「ぉわっ?!えっ?!名前?!」
いきなり校門の陰から名前が現れ、抱き着かれた。
突然の事にあたふたしていると、え?と上を見上げた名前はみるみる顔がゆであがり、真っ赤だ。
まぁ、それは俺も同じだけど。
「えええええっ?!か、かか快斗?!なんで?!今青子1人だったはずなのに……!!」
「え、俺青子に前にいるように指示されて……」
そして気づいた。
互いの顔の距離、3センチ。
それに気づいた名前はすぐさま離れ、近い!!とまた怒られた。
青子のやつ……仕組んだな……?
じろりと青子を見ると、そんな真っ赤な顔で睨まれてもと爆笑された。
まぁ嬉しかったし、いっか。
抱き着かれた時にした少し甘い香りがまだ俺の鼻腔に残っていて、余計にドキドキする。
きっと俺は、ついさっきの3センチの距離を一生忘れないだろう。
だけどまだまだ名前に近づける日は遠そうだ。
ーENDー
「私はオムライスにしよー♪」
「私もー!」
「で、どうだった?さっきの。ふふ」
「私がいつも校門で青子に抱き着くの利用したでしょ」
「名前もいい加減治しなよー。赤面症♪」
「…好きな人相手じゃ絶対治らない!!」
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