04





「名前、ごめんね。大丈夫?」

「だいじょ「ばないだろ」


口を挟めば、驚いた様に名前を呼ばれた。


「保健室行くぞ」

「大丈夫だから戻っていいよ」


冷たくあしらわれてここで尻尾巻いて戻るような俺じゃない。


「だーめ。大丈夫じゃないだろ?」

「大丈夫って言ってんじゃん。しつこい」

「大丈夫なら、腕と足見せて。左腕と左足ね。大丈夫なら、保健室に連れてかないから」

「……っ」


絶対怪我をしているはずだから、どちらにせよ保健室に連れていくことになるけど。

言い返せないのだろう、名前ちゃんはしぶしぶ袖と裾を捲った。

やっぱり。怪我してる。


「左腕は多分打撲。左足はくじいてるっぽいな。嘘ついたから保健室確定」

「いいよこんなんで保健室…っ!きゃっ!!ちょっと黒羽君!!」


お姫様抱っこをしたのと同時に、名前ちゃんからの罵倒と周りからの黄色い声。それを全て無視して、保健室に向かった。


「黒羽君おろして!!嫌だこんなの恥ずかしい!!周りから勘違いされる!」

「あーばれんなって。落ちて更に怪我したらシャレになんねーし、打撲してるとこ更に打ったらいってーぞー?」


おーいてぇいてぇ。なんて顔をすれば、不機嫌な顔をしながらも大人しくなった。

そんな素直だけど素直じゃないところがまた可愛いんだよなぁ。


「……なんで黒羽君なのさ」

「幼馴染みがよかった?」

「別に」

「俺は俺で良かったって思ってるけど」

「あっそ」


つんめてぇ〜。
どーしたら普通に会話してくれんのかなー。
もーなんか俺の奪い合いをしてたあいつが名前ちゃんの幼馴染みでしかも普通に笑顔で会話してるとかなんかもうあいつがレアキャラに見えてきた。


「あのさ、まずはどうしたらお友達になれんの?俺の事嫌ってるみてーだけど」

「黒羽快斗って人間の時点で無理」

「えぇっ?!」


ショック!!存在否定されちゃ手のほどこしようがねーじゃねぇか!


「俺の存在自体が否定されてる感じ?」

「別に。存在してるんだから否定してもしょうがないし、存在は認めてるよ」


理論的だなー。
まぁとりあえず存在は認められてんなら、まだおっけー……?なのか?


そんな会話をしているうちに保健室に着いた。中には先生はいないようで、名前ちゃんをベッドまで運ぶ。


「はい到着ですよお姫様」

「…ありがとう。もう戻っていーよ」

「寝かせに来たんじゃねーんだから」


勝手に保健室をあさり、包帯や湿布、氷嚢を用意。
腕や足首に処置をほどこした。


「っし!おっけ!」

「……黒羽君、器用なんだね」

「器用だぜー?器用だから、こんな事もできちゃう♪」


握っていた手を名前ちゃんの目の前で広げ、ポン、とバラを出した。


「わぁっ…!すごい!ありがとう!」


今回は造花しか持ち合わせてなかったけど、それでも俺に初めて見せてくれた笑顔は、俺の心臓に飛びっきりの衝撃を与えた。


「……俺、その笑顔大好き」




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