05
後ろから足音がした。
私が止まると、足音もピタリと止まる。
少し早めに、足を動かしてみる。
それに合わせ足音も早くなった。
…やばい……!
怖い!!
すぐさま安室さんに電話をすると、すぐに出てくれた。
『もしもし?どうしました?』
「えと……いや、なんとなく……」
怖くなって電話したが、今の状況を話したらきっともっと過保護になるに違いない。
あれ以上過保護になったら私は1歩も動けないんじゃないだろーか。
『帰るまで話します?』
「う、うん!そうしよう!」
そんな事は言ったものの、なかなか後ろが怖くて安室さんとの会話に集中できず、喋る安室さんに適当に相槌を打つばかり。
目線をチラチラと後ろに向きながら喋り、影が見えたと思えば段々と近づいてきた。
「こ、怖い……!!安室さん!怖いよ!」
『どうしたんです?』
「影……影が……!!近づいてくる!!」
そう訴えた瞬間、後ろから肩に手が乗った。
「きゃぁあああっ!!」
携帯を手から落とし、振り返ると帽子を被りサングラスをかけた男の姿。
「やだやだ殺さないでぇ!!」
「僕ですよ!」
「……え?」
聞き慣れた声に、上げていた腕をおろし見上げると、帽子とサングラスを外した安室さんの姿。
「……は?え?どういうこと?」
「いやー名前さんが心配でついつい」
「いやだって今電話してたんだよ?安室さんと……」
「ついてきてると思われたくなくて……」
耳についている機械をカチカチと指でさす。
あれはイヤホンマイク……
精神的に焦っていた私は後ろからつけてくる人が喋っていた内容は勿論、喋っていたことさえ気づかなかった。
私は地面に落ちた、まだ通話中になっている携帯を拾い上げ、それを耳に当てた。
「名前さん?」
「……安室このやろぉおおおおっ!!!」
「わぁああっ!!」
どうだ耳がじんじんするだろう。
「な、何するんですかぁ……」
「仕返し!!仕事どうしたの!!早く行かなきゃだめでしょ?!」
「わかってますよー。でも、もし今のが僕じゃなかったら、ほんとに危なかったですよ?」
「……うん、そうだね」
確かに、今みたいな怖い思いをするくらいなら安室さんの過保護の方が全然いい。寧ろ、いつも私のために時間をさいてくれているのだから感謝しなきゃいけないのかもしれない。
こういう幸せは、きっと痛い目みないとわからないんだ。
「ありがとう………透……」
「!!名前さん……もっと守りたくなります。そんな声で言われたら」
ぎゅうっと抱きしめてくれた彼の背中に、私も手を回した。
「ほんと、過保護だね。あ、呼び方は零の方がよかったかな?ふふ」
「透でいいですよ、名前さんに呼ばれるのであれば、なんでも嬉しいです。まぁ、僕は保護者ですから。彼氏兼保護者。大切な人を守らないと、ね」
ウインクした彼の胸におでこを当てて、幸せだな、って呟いた。
ーENDー
「名前さん、片時も話しませんから」
「……なんか怖い意味に聞こえるからやだなー」
「なんでですか」
「って早く行かないとやばくない?!」
「あっちに車止めてあるので、早く行きましょう!!」
「えっ?!私も行くの?!」
「離さないって言ったじゃないですか」
「えっ?!やだ!!そういう事?!いやぁあああ!!」
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