05
「あー!もう無理っ……じゃないっ!」
無理食べれない、と言おうとしたが先程の会話を思い出し、平次に食べさせるわけにはいかないと必死で口に運ぶ。
あともう少しあともう少し……
スプーンでアイスをすくおうとした瞬間、パフェが勝手に前に移動した。
「おっ?!パフェが動いた!!」
「アホ」
なんて声の主を辿れば、平次の目の前にパフェがある。持っていたスプーンを取られ、食べ始めた平次。
「い、いいよ!まだ食べれるし!」
「無理してんの丸わかりやねん」
「平次兄ちゃんかーっこいー!」
「うっさいわガキ!」
和葉と蘭はくすくす笑っていて、母の様に私たちを見ている。
無理してる、なんて平次もじゃん。
そう言いたかったけど、その言葉は平次をカッコ悪くさせそうで。
なんか申し訳ないから言うのをやめた。
小さい時から、優しさは変わらないな。
って……!!
「あ!!間接ちゅーじゃん!!」
スプーンを指させば、今更やんか。と言われた。
多分今更気づいたのかって意味ではない。
小さい頃から私が使っていたスプーンで余りを食べてくれていたから、その事だ。
そうだよね。
確かにそうだ。
何今更……
何故か、ドクンドクンと大きく心臓が脈打つ。
なんだ今日。病気か?
やばいなこれは。
また胸をぎゅっと掴むと、平次に心配された。
大丈夫大丈夫と適当に答えれば、俺に言いにくいなら和葉にでも言えと言われたので、そうすることにした。
あとで和葉に相談しようそうしよう。
パフェは今回も平次が全部食べてくれて、そのまま毛利探偵事務所に行く事になった。
ーーーー
「おじゃましまーすってあれ?小五郎おじさんは?」
「麻雀でもやりに行ってるのよまた」
ため息を大きくついた蘭ちゃんに苦笑いしていると、平次がコナン君を呼び出し部屋の隅の方へ行ってしまった。
凄い真面目な顔で何話してるんだろう。
昔の平次はよくふざけた笑顔をしていたから、真面目な顔は久しぶりに見る気がする。
はぁ。最近の平次をもっとよく知りたいなぁ。
「なんや名前。今日ため息ばっかやなー?あ、平次とコナン君の会話が気になるん?」
「和葉……」
そうだ。
私、今日平次を目で追ってばっかり…
ため息もついて、どうしたんだろう自分。
「……名前?具合悪いん?」
「和葉、相談乗ってほしい。蘭ちゃんも含めて」
「……えーで?」
神妙な面持ちになった和葉は、平次とコナン君にこっちで女子トークをするからと境界線を張ってくれた。
平次もコナン君も、きっと私の相談だろうとなんの疑問も持たず頷いた。
「……で?どないしたん?」
「どうしたの……?」
「……あんね、なんか今日胸がぎゅううって痛くなるの……病気かな……」
「ええっ!今も痛むん?」
「さっき和葉に話しかけられた時と、最初に平次と話した時かな」
「……名前、それって……」
「蘭ちゃんもそー思う?」
「えっ?なになに?二人とも原因わかったの?」
和葉と蘭は見合って、くすくすと笑っている。ひどいなぁ。病気だったらどーするのさ。
「そーいえば、今日の名前ため息多かったよね」
「平次の事ずーっと見とったし……」
「名前、今まで好きな人が出来た事ってある?」
「えーあるよ!あの人かっこいい!って」
「かっこいいと好きはちゃうで?」
「えっ……」
「ねぇ和葉ちゃん」
「せやな、蘭ちゃん。名前、それって……」
またもや2人で見合い、興味津々ともとれる表情で私にずいっと顔を寄せてきた。
「わわっ…!な、なに……」
「「もしかして、初恋?」」
「……えぇええええっ?!」
「「きゃーっ!!!」」
直後、どうしたどうしたと境界線を越えて来た男達が顔を真っ赤にして叫んだ私を見て本気で心配してくれていたのを、和葉と蘭はきゃいきゃいしながら見ていた。
あぁ、初恋と言う言葉を聞いた以上、意識しかできない私。
これから私の奮闘記が始まるのね。
ズルり、とソファーから滑り落ちた。
ーENDー
「名前、立てるか?」
「たっ、立てるから!1人で立てるよ…っ」
平次が差し出してくれた手を無視して、自分で立った
……のが間違えだった。
「きゃっ!」
「おっと…っ!」
足に力が入らず、膝からかくんと崩れ落ちるところで、平次に支えられそのまま上に引っ張り上げられた。
近い顔に動揺しつつ、どもりながらもお礼を言った。
「なんや今日名前おかしいで?」
「あんたのせーや平次!!責任取ったり!!」
「はぁああっ?!なんで俺のせいやねん!」
「ちょっと和葉ぁっ!もーコナン君!蘭!どうにしかてよぉ〜っ!!」
「僕達には……」
「どうにも……」
もーいやだぁああっ!!
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