02
先頭に立つ中森警部の後ろで、私達はキッドを睨む。
「本当に中森警部はしつこいですねぇ…」
「泥棒を捕まえるのにしつこいも糞もあるかぁっ!!」
「泥棒じゃなくて怪盗だっての」
そんなやり取りを聞いている中、カチャリと音がした。
その方向を見れば、私が教育を担当している後輩が、キッドに銃を向ける。
「!!」
やばい!!
キッドが撃たれる…!!
注意よりも先に、足が動いていた。
「キッド!!」
「えっ…」
乾いた破裂音が響いた瞬間、私の肩に激痛と燃えるような熱さが走る。
服は裂け、真っ赤に染まるのを見た瞬間、周りの視界はぐらつきキッドごと落ちているのだと認識した。
「名前ーっ!!!」
中森警部の声が遠くに聞こえる。
目の前には、歯を食いしばり私の頭を抱いたキッドを一瞬捉えた。
「せっかく助けてやったんだから……逃げなさいよ」
「バーローっ!!好きな奴を置いて逃げられっかよ……!!」
「捕まったら許さないから」
その直後、ふわっと浮く感覚に陥った。
きっと、ハンググライダーを開いたのだろう。
「捕まえるって言った癖に……」
「私が……捕まえる。……っ……」
肩の痛みに、顔を歪ませる。
キッドに見られてしまった。あまり弱いところは見せたくなかったのに。
「いてぇなら我慢すんな……俺が耐えらんねーよ…寝てろ……」
一瞬片手を離し、口に何かを含めたキッドは私をまた両手で抱き直し、顔を近づけてきた。
「なにすんっ……!!」
キスをされたと思えば、舌で何かを押し込まれた。
瞬間、脳内がぐらつき眠気に襲われ、意識が遠のいたーーー。
ーーーー
あれから1週間が経った。
拳銃で撃とうとした後輩、私共に謹慎処分。
日本警察は正当防衛、緊急事態以外撃ってはいけない。
後輩がやったことは明らかに自ら行ったものとし、私は教育係として責任を負い謹慎処分。
まぁ、中森警部は私の怪我を気にして、謹慎処分という名で休みなさいと指示してくれた。
弾が当たったのが左肩だった為まだ右利きの私に大して影響は無かったものの、やはり両手が使えないのはきつい。
「あーもー左腕使いたい〜……」
右腕でコーヒーを入れていると、こんこん、と窓の方から聞こえた。
私が怪我をしてからキッドが来るのは初めてだ。
窓の鍵を開けると、いつもの様にこんばんはと挨拶をしてきた。
「なんの用?」
「相変わらず冷たいですね」
「……無いならあなたに言いたい事があるの。中に入って」
「……わかりました」
キッドを中に入れ、ソファーに座らせた。
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