08-3







宝石を月光に当て、眺めていたナイトメア


フードをかぶっていて後ろ姿しか見えないが、どこか悲しげな雰囲気に包まれていた。


「その宝石に思い入れでも…?お嬢さん♪…いや、ナイトメアか」


そういうと少し驚いた様子でこっちに振り向いた。


もちろんフードに隠れている表情は読み取れないが、何か考え事をしているのはわかる。


「…お嬢さん?あなたの美しい声が聞きたい。その宝石の様な…」


相変わらず表情わかんねぇなー。

にしてもなんで俺がいない時に…?
いつもは俺が盗もうとしていたものに目をつけていたのに。


「…私が目をつけていなかった宝石に手を出すのは珍しいですねえ…どうされましたか?」


そういうと、ナイトメアは俺に銃口を向けた。


ビビリはしない。
絶対に命は奪われない自信があった。


名前だから。





俺は両手を挙げた。

まあ撃ちはしねえと思うが……


「女性が銃を持つなんて、あってはなりませんよ?例えエアガンでも…」


そういうと、あいつはぐっと指に力を込めた。


うわまじかよっ…
ほんとに撃つ気か…?!

やべーっ…

撃つとしたらどこだ…っ?!

命は狙わねえはず

だとしたらハット…いや、ビビらせる為だとしたら…顔から1番近い…

モノクルだ!!


瞬時に判断した俺は顔を少し逸らした。

鼓膜が破れそうなくらいの爆風と、モノクルが割れる音


そして目の前から落ちるモノクル。
それを見て正直ビビった。


っぶねえええええっ!!

あいつ狙うの上手すぎだろ!!
いろんな意味でドキドキさせられるぜ…


なんて内心ドキドキしていると、ビルの下からかすかに警備員の声が聞こえた。


「上から発砲した音が聞こえたぞ!!屋上だ!!急げ!!」


あーあ…
自分で居場所教えちまって……


「おっと、警備員に気づかれてしまいましたね。挑発的な女性は嫌いではないですよ」


余裕を装い笑った。

その時、チラッと足元に見えた割れたモノクル


「あーあー…モノクルがめちゃくちゃですね。私の命が奪われる所でしたよ」


よいしょとモノクルを拾った。


あーあー
これ直すのめんどくせえんだよなぁ。
名前を甘く見すぎてたか?


そう思っていると、目の前にキラリと光る何かが飛んできた。


「っと…!」


それをキャッチした瞬間、またも足元に
乾いた音と衝撃。
少し体が揺らいだ。


これ以上近づくなってか?


そう思いナイトメアを見ると、煙幕を投げられた。


何も見えねえっ…

くそ、いつも俺がやってることやられちまった!

どこだナイトメア…!!


するとかすかに聞こえるヘリの音



やられた…っ!


煙幕が上がるころには、もうナイトメアの姿はなかった。


その後警備員が屋上につき、俺も宝石を投げて返し煙幕をあげて逃げた。



夜の気持ちいい風を浴びる中、頭の中は名前の事でいっぱいだ。

なんであいつ、俺が予告状を出してない美術館に盗みにきたんだ?
あいつの事でわからないことがまた増えちまった……


でも、あの悲しそうな様子……
何かあるんだろーな。

この状況の中で気付いた事が2つ。

名前を守りてえと思った。


そして…



俺の中の名前が



こんなにも大きかった。




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