08-2







「その宝石に思い入れでも…?お嬢さん♪…いや、ナイトメアか」


その言葉に宝石をすぐに隠し振り返った。


自信に満ち溢れた白いポーカーフェイス



怪盗キッド…!!



なんで…なんでここに…っ!!


このままじゃやばい

くそっ…ここで怪盗キッドを見たと通報されれば工藤新一も絶対に来る。


工藤新一は私を呼び、伊武が代わりに行くことになるとヘリが出せなくなる…っ

早く撒かなきゃ…


しかし私も顔面はポーカーフェイス

私が声を発せばキッドの勝ち。
あいにく、私は変装も変声も出来ない。
伊武にかかればおてのものだが……




「…お嬢さん?あなたの美しい声が聞きたい。その宝石の様な…」


何がお嬢さんよ。
私の正体に確信が持てないだけの癖に。
私の時間を邪魔しないで。


「…私が目をつけていなかった宝石に手を出すのは珍しいですねぇ…どうされましたか?」


ポーカーフェイスで、どうされましたか?と聞かれると、馬鹿にされているように聞こえる。

それに苛立ちを覚えた私は、銃口を向けた。


キッドは表情1つ変えず、喉の奥で笑うと両手を頭の横まで上げた。


「女性が銃を持つなんて、あってはなりませんよ?例えエアガンでも」


余裕そうね。

でも、引き金を引かないと思った?
私にとってあなたは邪魔でしかないの。

……ねえ、わかる?







私はぐっと指に力を込め





引き金を引いた


乾いた破裂音とともに、響く声




「上から発砲した音が聞こえたぞ!!屋上だ!!急げ!!」





「おっと、警備員に気づかれてしまいましたね…挑発的な女性は嫌いではないですよ」


そう言って喉の奥で笑う、モノクルのない、キッド



「あーあー…モノクルがめちゃくちゃですね…」


キッドの足元には、割れたモノクル



「私の命が奪われる所でしたよ…」


そう呟きながら余裕そうな表情でモノクルを拾い上げた。



その言葉に、脳に電気が走ったようにフラッシュバックする。

あの時の記憶……

そして自分で奪いかねなかった、私の周りの人の命、行動と思考の矛盾



私の中での怪盗キッドや黒羽快斗の命は



こんなにも大きかった。



目から溢れ出そうな物を我慢し、持っていた宝石をキッドに投げた。


っと…!

そう言ってキャッチした瞬間を見逃さない。


エアガンで3発、キッドの足元の床に撃ち、煙幕を上げた。





きたっ…!!


ヘリの音がする。


『お嬢様、大丈夫でしたか?ホバリング中です!乗ってください!』



伊武の少し焦った声

私は物を壊すのと、自分の命が危ない時以外、エアガンは使わない事を知っている。


屋上から発砲音が聞こえたのと、私が遅かったので心配したのだろう。


ホバリング中のロープに飛び乗り、その場を後にした。



「私は大丈夫よ伊武」




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