08-1
『お嬢様、聞こえますか?』
「ええ」
『今清掃員として侵入し、室温設定を高く上げました』
「ありがとう。話してて大丈夫なの?」
『ええ。掃除するからと1回全員に出て貰いました。バレない様設定しましたので大丈夫です』
「わかった。しばらくしたらあの部屋に行くわ」
『かしこまりました』
小さい体を活かして防犯カメラの死角をくぐり抜け、宝石の部屋の前で伊武とやり取りをして少々待機。
次の行動を頭の中で確認していると、伊武から連絡が入りインカムを抑えた。
『そろそろ入って下さい。これ以上待つと入れなくなります』
「わかったわ」
ピッキングをして、中へ。
暑いわね…
でも仕方ない。
気圧を上げる為。
防犯カメラの死角に入り、大量の煙幕を上げた。
こうなればもう少しで警備員が来るはず。まあ、ドアはもう開かないけどね。
その時、ベルの赤い点滅とともに警報がなった。
“何者かが侵入した模様、至急、B-1へ”
B-1、多分ここの部屋の事だ。
ここからはスピード勝負。
宝石のガラスケースへエアガンを向けた。
乾いた音と共にガラスケースが壊れ、宝石が露に。
その宝石をしっかり握りしめ、窓にもエアガンを向けるが、なかなか割れない。
防犯ガラスか…
徐々に割れて行くがそこから空気が漏れ続けると、気圧が下がり警備員が中に入ってきてしまう。
内心少し焦りながらも発砲し続けなんとか割れた。危ない危ない。
そこから一気に空気が部屋の中へ入ると同時に、警備員達も中へ入ってきた。
部屋は小さい嵐状態になり、必死で追いかけてくる警備員達。
「おい待てー!!」
「捕まえろ!!」
でももう遅い
最後に煙幕を上げ、外壁に着いていた橋を登り屋上へ。
なんかかっこ悪いけどまあいいか。
あらかじめ用意しておいた、私が羽織っている黒いナイロン素材のパーカーに重りをつけて偽ナイトメアの完成。
それを屋上から飛ばし、警備員たちの目を眩ませた。
「おい!ナイトメアだ!!下に降りて行ったぞ!!追いかけろ!!」
警備員達の声が遠のく。
それに安堵しため息を1つ。
持っていた宝石を手に、月光へ当てた
「あなたはどこまで私の愛を聞いてくれる?」
月光に当てると表情が変わる
時には金に
時には青に
時には透明に。
あなたは、表情が豊かね
私の両親は、どんなんだったかな…
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