05-4
「さみーのか?」
「んーん!大丈夫♪」
「…ほら、これ肩にかけとけ」
着ていたパーカーを私の肩にかけてくれた。
「悪いよっ…」
「悪くねえよ」
「なんかわがままでごめんね」
「わがままじゃねぇし、そんなわがまま可愛いもんじゃねえか…」
「え?もんじゃ?」
「…ぷっ…いや、なんでもねえ…」
「え、今なんて言ったの?!聞こえなかった!!なんで笑ってんの?!」
「ははっ、なんでもねえって」
「なによー!」
…なぁ名前
その反応も
細かな優しさも
その可愛い笑顔も
全部、偽物なのか……?
「じゃあ、そろそろ遅いから帰ろっか♪」
「家まで送ってくよ」
「いつもごめんね、ありがとう」
「いやいや…なあ名前」
「ん?」
「…ごめんな」
「…どうしたの?なんで謝るの?」
「いや、こんな時間に呼んでさ」
「私も会いたかったからいいよ♪」
「ほんとかー?」
「ほんとだよ!」
「良かった」
「ふふっ」
俺のごめんなの意味はたくさんある。
もちろん、こんな時間に呼び出したこと。
キスしたこと。
お前の敵であること。
…軽いのも、重いのも、色々だ。
“私も会いたかった”
今はその言葉に、浸らせてくれ。
2人で帰路につき、家まで送ってもらった。
“また明日、学校で”
お決まりの言葉
その言葉を交わして快斗は帰って行った。
ごめんなって、なんで謝るの?
騙しているのは、私の方なのに……。
心が少し揺らいだ
それと同時に目頭が熱くなる。
手の甲に何かがこぼれて、それを確認して理解した。
ああ、泣いているのか、私。
ーーーー
「やあ、こんにちは工藤新一君」
「こんにちは中森警部。…ってなんでおめー中森警部に変装してんだよいっつも」
「灯台もと暗しって言うだろー?!」
ガハハと笑って俺の背中をバンバンと叩いてくる。
「ったく…」
「蘭さんの方が良かったか?」
「いいから行くぞ」
ため息をつき、中森警部…いや、キッドの耳を引っ張った。
「いででで取れる取れる…!!」
そしてある美術館へ向かった。
prev|next