05-1
「またバレてしまいましたね」
何も見えない階段の上から、自分と似た声だけがこだまする。
振り返ることなく、そのまま話を続けた
「バレバレなんだよ…で、名前のことか?」
「ご名答。名前さんは本当に探偵でしょうか?」
「それは俺も思ってたところだ。あいつ、わざとおめーを捕まえなかった様に見えた。」
「やっぱりそうですよね。キッドを捕まえたいと言っていたのに、何故でしょう?」
「さあなーただおめーに近づきたいのは間違いねえだろうな」
「一緒にいた時の名前さんは、左利きでしたか?右利きでしたか?」
「防犯カメラに映ってた映像では、右利きだったな」
「さっき私が宝石を投げて返した時、とっさに出た手は左でした。左利きが有望でしょう。」
「謎の人物も左利きだったな…」
「謎の人物が消えた直後に、名前さんが探偵と一緒に中へ入ってきた。謎の人物と名前さんは同一人物ではありませんが、謎の人物が本当の名前さん、そして探偵と一緒にいた名前さんはまた別の人間の可能性が高いでしょう」
「謎の人物、名前は左利きで、名前の姿をして俺と一緒に防犯カメラに映っていたやつは右利きの名前の仲間……」
「つまり、謎の人物と名前のさん姿をした別の人間が同時に出てきた時…2人は必ず違う利き手でしょう。本人達は気づいてないと思いますが」
「…おめーにこないだ身近に怪しいやついねえのかって聞いた時、いないって言ったよな?いるんじゃねえのか…?名前が」
「……私の隣の席。とだけ伝えて置きましょう」
「おめーも高校生か。まあ、そんなことだろーと思ったぜ」
「…名前さんには、おじいちゃんがいます。そのおじいちゃんが怪しいんですよ」
「…じゃあ俺と一緒に防犯カメラに映ってたのは、名前のじいちゃんだってか?!」
勘弁してくれよ…
手で顔を覆いため息をついた。
「多分そうでしょうね。」
「そういえばあいつ、両親いないんだって?」
「私に言ってきたのは、前の県にいる…とか」
「それも怪しくなってくるな」
「私が盗もうとしていたビクスバイト…あれの本物をブレスレットにしてつけていました」
「名前がか?!」
「ええ、多分私に勘づかせる為だけにつけたんでしょう」
「挑発的だな」
「その本物のビクスバイトは、両親が美術館から買ったと言っていました。これも調べたいので、私と一緒に美術館に来て欲しいんです。両親が、裏で糸を引いている可能性もあります。」
「んで、おめーは元の高校生の姿でくんのか?」
なんて、こいつがそんなことするわけねぇか
「そんなことはしませんよ。もう裸を見せてしまったようなものですから、これ以上晒せませんね」
「気持ち悪く例えんなバーロー」
「…では、詳しくは連絡しますね」
「俺おめーの連絡先なんて知らねえぜ?」
「今移させて頂きました」
「はっ?!」
すると上の方から携帯が振ってきて、階段に座っていた俺の膝の上に落ちた。
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