04-4





予告状を出した当日になっても
謎の人物が現れることなく、今屋上で俺の目の前にいるのは探偵2人。


「おや。今日は探偵と…隣は名前嬢…ですか?」

「なんで私のこと知ってるの?!」

「私の敵ですし……可愛いお嬢様だったので、調べさせていただきました」

「…嘘がうまいのね」

「嘘なんてついておりませんよ。名探偵、蘭さんはどうしたんですか?」

「おめーは他の女の心配するより、今の状況を心配した方がいいんじゃねえのか?」

「そうよ!」

「…そうですね。では、お近づきの印に少し遊びましょうか」

「「は?」」


そう言い放ち、屋上から中へ入り、階段を駆け下りた。







「「待てー!!キッド!!」」


暗い館内に窓から漏れる月明かり

それに反射する白いマントの端を追いかける。

必死で追ったが距離が縮まらない。


「名前、止まれ」


隣で走っていた新一が私の目の前に手を出し、止められた。


「なんで?!」

「足音が聞こえねぇ。この階の何処かにいるはずだ。通路が二股に分かれてるな」

「私こっち行く!!」

「わかった!」


私は左、新一は右に行くことになった。



怪盗キッド…
やっぱり足早いわね…


すると曲がり角から白いマントがなびくのが見えた。


「キッド!!!」


無我夢中で後を追うと一つの部屋に。


奥の月明かりがさす窓枠に座りながら、盗んだ宝石を手の上で遊ばせる顔には余裕しかない
何にしろ目を合わせない

苛立ちを隠しながらもキッドに冷静を装う


「キッド、追い詰めたわよ」

「追い詰められましたね」


ようやくこっちに目を向けたと思えば、挑発する様な余裕の笑み


「随分余裕ね」

「そりゃあ、捕まらないですから」

「馬鹿にしてるの?」

「馬鹿にしてるのは、名前嬢の方ではないですか?」

「は?」

「これは私の探していたものではなかったので、お返しします」


私は少し上に投げられた盗品を片手でキャッチした。


「探しているものって?」

「それをあなたに言う訳ないじゃないですか」

「……ちっ」

「女の子が舌打ちなんて…挑発的ですねえ」

「あんたが嫌いなのよ」

「見たらわかりますよ」

「ほんっとむかつく!!なんなのその余裕!!」


私が言うと痺れを切らした様にゆっくり立ち上がり、こっちに向かってきた。

両手をポケットに入れ、何もしないことをアピールしている。



「あなたは私を捕まえられないですよ…名前さん?」

「なっ…!ん!!!」




キスをされた

触れるだけの
一瞬のキス


何を思ってこんな事をしたの。
馬鹿にしてるの?
何がしたいの……



一瞬触れた唇に、意に反して心地よい温かさが残る。


我に返った時には、その白い怪盗はいなくなってた。



「……くそっ!!!」


目の前のテーブルに拳をぶつけた。
手に熱を帯びて、じんじんと脈を打つ

手の痛さがわからないほど、悔しさでいっぱいだった。


「名前!!キッドがいたのか…?」

「逃げられた…」

「くそっ…でも宝石は取り戻したみてえだな」

「…うん」

「…行くか」

「うん」


キッドに遊ばれた。
私が遊んでやるつもりだったのに。

頭には“屈辱”

その文字しか浮かばない


「今日はもう帰れ。俺はまだ調べる事があるから、送ってやれねーけど」

「わかった」






名前の後ろ姿を見送り、念のためしばらく階段に座る。


「そろそろいいか…で?なんで残ってんだ?……キッド」




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