03-2
「つっ…疲れたー…っ」
「ははっ。お疲れ!じゃあ、風邪引くなよ?」
どこか帰りそうな雰囲気の言葉に、まだ帰ってはだめと肩に手を置く。
「もうすぐおじいちゃん帰ってくる時間だし、私の家で服乾かしながら待とうよ!おじいちゃんに送ってもらお?」
「いやわりぃよ。女子ん家に入るなんて…あれだし…」
「ふふっ。大丈夫!さぁ入って入って♪」
なかば無理やり快斗の背中を押し、家の中へ入れた。
「わりぃな」
「んーん!服、脱いで?」
「えっ?!」
「ん?乾かさないの?」
「あっ…だなっ…!」
「んん?」
「いやいや…!頼む…」
照れながら私にシャツを差し出しす快斗。
「洗濯しちゃうね!快斗も風邪引いたら困るから、シャワー浴びておいで?」
「っは?!えっ…今?」
「うん!大丈夫!覗いたりしないよ!」
「わーっとるわ!!」
「ふふっ。はい、タオル!あのっ…下着はないけど…」
「おう、ズボンは裾ぐらいしか濡れてねぇし、大丈夫だ!何から何までわりぃな。」
「んーん、大丈夫!あっちシャワールームだよ」
「おう、さんきゅーな」
シャワールームへ入る快斗の背中を見送り、とりあえず一息。
「…ふぅ。私も早くシャワー入りたいわね…伊武…早く帰ってきてー…」
さっさと黒羽快斗を帰らせたいけど…
まだまだシナリオの1部。
もっとゆっくりお話をしないとね。
それと、あなたを見に行ったのは私じゃない。もう一人の私。
それをあなたは気づけるかしらね。
怪盗キッド。
ーーーー
「あったまった〜…」
「よかった♪服乾くまで、一応これ着ておいて!」
自分用に買った、なんのおもしろみもない無地のTシャツ。
大きかったので、一回着てそれ以来着ていない。
それをぽいっと快斗に投げた。
「あ、ちょーどいい。さんきゅ!」
「いーえ!じゃあ、私も入ってくるね!」
「えっ?!あっ、おう…」
彼は顔を赤くして、私に背を向けた。
ここで着替えるわけでもないのに。
自分はシャワーに入れてもらった挙句、名前本人の家なので止める権限はないと思ったのだろう。
快斗には、もっとドキドキしてもらわないと困る。
もちろん私の愛情表現ではない。
でもドキドキを味わって貰わないと、シナリオ通りにいかないのよ。
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