02-4





息など忘れ
階段を勢いよく上がる。


「おい待てキッド!!!」

「待てと言われて待つ怪盗がいますか?」

「くっそ…!!」


余裕そうな返事に苛立ちを感じるが、それも虚しく距離が縮まない。

そのまま2人はビルの屋上へ。

状況に似つかわしく無い綺麗な星空が2人を覆う。


「追いかけっこはここまでだキッド」

「おや、待てと言うもので待ってあげているまでですよ?優しい怪盗ですね」

「んにゃろー…」


するとキッドから投げられた何かがキラッと光った。

それを手に取り確認する。


「それはお返しします。」

「…は?」

「私の探し求めていたものではなかったので」


言いながら煙幕をだそうとしているであろう片手を上に挙げたキッドを止めた。


「おい待て!!園子に何をした?」

「御挨拶をして夢の中へ入っていただいただけですよ?」


全てを悟ったように新一はなるほどと呟き、片方の口角をあげた。


「警備を増やした時に警備員に装い、部屋の電気を消した。その間にキッドの姿に戻ったおめーは園子の手の甲にキスをした時に指紋を取って眠らせ、それでガラスケースの中の宝石を盗んだ…指紋認証で開くガラスケースだったからな。でもなんで園子の指紋だとわかった?」

「さすが名探偵…ご名答。裏の裏をかいたまでです。園子嬢の手の甲にキスを落とした時、なぜあんなに悲鳴をあげられたのかはわかりませんが」


キッドはふっと笑って目を閉じた。


「もし鈴木次郎吉の指紋だったら、私の作戦は変わっていたでしょうねえ…」


次いで新一がなるほどな、と笑い、少し目線をずらした。

その瞬間をキッドは見逃さない。

ポンッという音とともに煙幕が上がる。


「!!っくそ!!おいキッド!!」

「私に逃げる隙を与えてくれたのはとてもありがたい。では。」


そういってハットを深く被り、下に落ちた瞬間だった。


「っ!!」

殺気…

どこからか目線を感じた。

野次馬や、もちろん探偵からではない。

何か…
何か強い殺気……


用心しつつもハンググライダーを開いた瞬間、サッカーボールが横スレスレを通った。


「っぶねっ…!」


1人呟きながらも、ポーカーフェイスで闇の中へ消えてゆく。



あの殺気…

きっと俺にサッカーを当てるのに集中していた探偵は気づいていない。


なんなんだ…

今の…


怪盗キッドとして、初めて恐怖を感じた。




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