白い馬に乗った事件を探る王子様
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彼が帰ってきた。


私が振られた、彼が。



前に会ったのはいつだったかな


振られた、というより、私が告白する前に彼女はいらないんです。とハッキリ言っていた。


告白する以前の問題だ。




「名前さん、お久しぶりです」

「あっ……探くん…久しぶり……」




気まずい。

とっても気まずい。



はぁ………
私の白馬の王子様はあなただったのに。


私が馬に乗る前に、あなたは行ってしまった。


……白馬探……帰ってきたのね。




「名前さんに、ロンドンで有名なクッキーをお土産に持って来たんです」

「えっ?あっ、そうなんだ…!ありがとう!」



そのクッキーを、“どうぞ”と渡されたので受け取った。



「あ、それと………」

「ん?」


探くんはおもむろに私の手を優しく持ち上げ、手の甲にキスを落とす。




「ただいま戻りましたよ、お姫様」

「さっ…探くん…!恥ずかしいよ……」




周りの黄色い声なんておかまいなしの探くんは、本当に高嶺の花。


お姫様なんて呼ばれたら、1歩近づけた気がしてしまう。


顔を真っ赤にして俯いていると、またもや探くんが口を開いた。



「今夜一緒にディナーでもどうですか?」

「でぃっ……でぃなー……」



ディナーって………


嬉しいけど、これ以上思わせぶりをして欲しくない。


でも、目の前でニコリと笑って首を傾げている彼に、非はないのだから。


私が勝手に好きなだけなんだから……


断る理由もないし、行こうかな。




「うん、いいよ…」

「では放課後を楽しみにしてますね」

「はぁ。」



こうして、私の心臓を弄ぶ彼とディナーの約束をしてしまった。





ーーーー


「美味しいですね、ここのお店」

「だねっ……!」



互いに制服なのであまりいいお店には入れないが、ここもじゅうぶんいいお店だ。

そのせいか、探くんがいるせいか、緊張してうまく話せない


多分、後者だけど。




「……なんか名前さん、以前よりよそよそしくなりましたね」




いきなりの正確な指定に、心臓をびくりと跳ねさせた。



「そっ、そうかな…っ。久しぶりだからかもしれない!」

「……そうですか」

「……探くんは、今回もこっちで事件を解決しに?」

「そうですよ。またすぐロンドンに戻りますが」

「そっか………」




また戻ってしまうんだね。


でも、私的にはそっちの方が好都合かもしれない。



「本当に探くんは、事件解決に大忙しだね。凄いよ」

「大変ですよ」



困った様に笑う彼

私の事なんて、1ミリたりとも考えてないんだろうな。



「ほんと、事件解決一筋って感じだね」

「ええ。でも最近、そうでもないんですよ?」

「えっ?どういう事?」



事件解決一筋の探くんが珍しい……

どうしたんだろう



「探偵をやめる程………」

「えっ?!」

「……とまでは行きませんが。それ程までに、僕の思考を止める方がいる」

「え……?」

「あなたですよ。名前さん」

「ええっ……?!」



なんでっ?!なんで私?!
でも探くん前帰ってきた時は彼女いらないって言ってたし……


今日帰ってきたばかりなのにいきなり過ぎるし……


そもそも好きとかそういう意味じゃないのかな?!



「……名前さん?“え”しか言ってないのにそんな百面相していては伝わりませんよ?」



ふと我に返ると、ニコリと微笑んだ探くん。


ちょっと恥ずかしくて、コーヒーに口をつけて顔を隠した。




「ごめん……私が探くんの思考を止めるって、どういうこと…?」

「そのまんまですよ。事件解決だけに力を入れて来たのに……前回帰ってきて、あなたと会って……ロンドンに帰った時にわかったんです。」

「………」

「名前さんといる時は事件の事なんて何一つ考えること無く、夢中になれた。それが心地よくて、ロンドンでも名前さんを求めてたんです。あなたに会いたい、と」

「うそっ………」



確かに、前回帰ってきた時は半年ぐらいいて、そこで仲良くなって……。

たくさん遊んでたけど……

本当に、私のこと………?



「嘘じゃありませんよ。僕も所詮男です。魅入られて、大切な人の存在に後から気づくこともあります」

「ほんとに……?」

「ほんとですよ、名前さん」

「嬉しい………っ」



ちゃんと思ってくれていたんだ……


高嶺の花だと思っていた探くんが、すぐ横に来てくれた。

帰ってまでも私の事を思ってくれていたなんて、こんなに嬉しいことないよ。


私も……


「私も…っ!探く「しーっ……」



“私も探くんが好き”



そう言おうと思ったのに、探くんの人差し指が唇に当たり、しーっと言われてしまった。


その事に驚きを隠せなくて、探くんに“なんで?”と目で訴える。


「それは僕が名前さんに言うセリフですよ。でも、今回はすぐロンドンに帰らなければいけない。今言ってしまうと、僕が耐えれません」



やっと指を離してくれたのに、そのかっこよさに言葉が何も出てこなかった。



「次戻って来た時、覚悟しておいて下さいね?」

「……っはいっ!!」




“声が大きいですよ”なんて笑われたのを最後に、この店を出た。




「さ、今日も送って行きますよ、お姫様」



なんて腰に腕を回されて、リードされながら。



やっぱり私の王子様は


彼なんだーーー。






ーENDー




半年後ーーー。





「名前さん、戻って来ましたよ。」

「おかえり探くんっ!」

「名前さん……あなたの太陽の様な笑顔に、向日葵と化したこの僕を受け入れて欲しい。名前さんが好きです。お付き合いして頂けませんか?」

「探くん……っ!こんな大きい花束まで……嬉しいっ!嬉しいけど……ここ空港だから…ちょっと恥ずかしい。かな。」



でもそれ以上に、幸せです。




ーーー彼の名前は白馬探


白い馬に乗った、事件の謎を探る王子様



キザで、芝居っぽいセリフをなんなく言えちゃう人だけど……

そこがまたかっこよくて。

そして、今は私の大切な彼氏です。



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