学校祭
「さぁさぁ!ほら早うせい!」
「え〜……」
大阪に引っ越してきて半年
仲良くなって付き合った平次が、今目の前でメイド服を私に着せようとしている。
平次にこんな趣味があったなんて…
少し落胆。
「えーから着ろ!早う!昨日学校休んだ罰や!」
「サボっただけじゃんかー」
「それがあかん言うてんねん!」
「なんで罰がこれなのさ」
「……名前昨日学校休んだやろ?その間に学祭の出し物がメイド喫茶に決まってん。名前もメイドの格好する事に決まってしもたから学祭前に似合うか見とかんといかんなぁと思てん」
なるほどね…
変な趣味とかじゃなくて良かった。
でも似合うか見とくって何よ。
「着てすぐ脱いでいいー?それならいいよー」
少しイライラしながら言うと、“おう”と一言。
こんなんで喧嘩するなら、さっさと着て脱いでしまった方がいい。
完璧平和主義者の最高解決策!!
突き出されたメイド服を手に取り、別の部屋で着替える。
なんかふりっふりだし嫌だなぁ。
そういえばメイド服学校から借りてきたんだ…
平次が買ったんじゃなくて良かったー。
全く乗り気じゃない私はだらだらとメイド服に着替え、平次の部屋へ。
「恥ずかしいんだけど」
そう言いながら平次の前に立つと、驚愕の目でこっちを見てくる。
その視線がなんとも痛い。
口をポカンと開けっ放しの平次がやっと声をだしたかと思えば…
「あっ……」
「あ?いうえお」
「ちゃうわあほ!あかん!あかんわ!」
「えっ何が」
「全然似合っとらん!なしやなし!脱げ!今ここで脱げ!」
「今ここでは脱がないよ!!てか何さそのひどい言い方!」
「…とその前に1枚……」
そう言われた瞬間、カシャっと音がした。
「おい人の話を聞け!そして写真を撮るな!!」
「別にえーやん。かわい………くないんやから」
「可愛くないから撮るのかよっ!!ただの恥晒しだよ!!もういい着替えてくる!!」
「あっおい…!!」
私も別に着たいわけじゃないので、特別傷つきはしなかったし、そこまでいらつきもしない。
ただ似合わないと言われ少しショックだったが……
学祭当日、結局着なきゃだめと言われメイド服を着て接客していると、それを見た平次が怒りだし周りは唖然。
「着るなゆーたやろ!!」
「しょうがないでしょ!!」
そんな言い合いをしていると、和葉が間に割り込んだ。
「平次!名前!落ち着き!!えーか名前!平次が着るなって怒っとんのはただの嫉妬や!!」
「…へ?」
「なっ……!おい和葉……!」
「黙っとき平次!あんたは素直やなさすぎんねん!どーせ似合わんから着るなとか言うてんねやろ?!メイド服姿が可愛過ぎて周りの男子に見せたないって素直に言いや!名前傷ついてまうで?!以上!!」
そういって和葉はスタスタとどこかへ行ってしまった。
一同唖然
私もポカンとしていると、平次にこっち来いと屋上へ腕を引かれた。
「なに?」
「悪かった……ほんまは他の男にメイド服姿見せたないねん…可愛いすぎんねんあほ」
そういって私に優しいキスをしてくれた。
なんだ、そういうことなんだ。
素直に言ってくれればいいのに…
でも、付き合っているのに気づけない私もまだまだだなぁ。
お互い様だね。
「ふふっ。私は平次だけの!大丈夫だから、ね?」
「おう!当たり前や!…好きやで」
「私も好きやで♪」
「ははっ。マネすんなあほっ」
和葉のおかげで仲直りし、2人で手を繋いで教室へ戻った。
和葉、ありがとう。
平次の嫉妬も、たまには悪くないな。
ーENDー
「お待たせしましたー!」
「あっ…あの、写真いいで「はいはい俺の名前に手ださんといてなー」
「写真ぐらいえーやないですか……」
「写真ぐらいぃぃぃ?そないな安売りしとるみてぇな言い方しよって…えー度胸しとんなーおたく」
「…はぁ。平次………やめなさい」
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