4月1日
今日は4月1日
エイプリルフール!!
彼氏の快斗に嘘をついてみることにした。
「ねぇ快斗」
「んー?」
「私ね………引っ越すことになったの。大阪に……」
「……そうなのか…良かった」
「え?良かった?」
「俺もいつか名前に言わなきゃと思ってたんだ……引っ越すこと」
下を向いて、悲しそうな目をして、拳を握った快斗。
その言葉と反応に、驚愕した。
嘘…だよね?快斗もきっと、エイプリルフールだからって嘘ついたんだよね…?
「快斗…?嘘だよね?エイプリルフールだからだよね…?」
「バーローっ…先にエイプリルフールに引っ越すなんて話してきたのは名前だろ?でも、俺も大阪なんだ…引越し先。だから良かった……安心した」
そう言って、私をぎゅうっと抱きしめてくれた。
でも、私のは嘘。
大阪になんて行かない。
だから、嬉しくともなんともない。
お願い、行かないで……。
「……やだよ…行かないで快斗……私嘘ついたの!エイプリルフールだからって……ごめんなさい!!だから行かないで…お願い……」
こみ上げてくる感情をぐっと堪え、震えた声で強く強くお願いした。
ぎゅうっと快斗を抱きしめ返して。
「………ごめん……」
そんな返事、聞きたくない。
今までこらえていた涙は、その言葉によって溢れ出し、頬を伝う。
「やだよ……」
行かないで、快斗…
「泣かせてごめん……ちょっと言いすぎた」
「…はっ?」
上を向くと、ニコニコしてこっちを見やる快斗。
その顔に全てを理解した。
「……嘘?」
「名前がバレバレな嘘つくからいけねーのっ」
「……バ快斗おおおおおおおっ!!!」
「やり返したんだよーっ」
べーっ!と舌を出してくる快斗がどこか可愛くて、少し笑った。
ーENDー
(…でも、嘘で良かった…ふふっ)
(え?今なんか言ったか?)
(快斗大嫌いって言ったの)
(そんなぁ…名前ちゃあん……)
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