5.舐める
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「では、各自準備始めて下さーい」


その一声で、ついに今日から学祭の準備が始まった。私と青子と快斗の3人は、まず装飾を作る準備に取り掛かる。


「快斗器用だねー」

「だろー?」


快斗は器用に形を整えて行く。
私はビニールを半分に切らなきゃいけないんだけど、ビニールはなんせ切りにくい。

カッターを使って切ってるけど、なんか途中でガタガタってなって点々と穴が開くだけ。あぁ切りにくい……!!

でも快斗が器用で私は不器用なんて許さない!!


「おい名前、その切り方危ねーって……代わるぜ?」

「やだ!!私がやる!!」

「もー、なんの意地張ってるのさー」


なんて青子も苦笑いで、青子が代わろうか?と言ってくれる。
優しさで言ってくれているのだろうけど、その言葉に余計に火がついた。

まぁ、火がつくほどの事でもないんだけど、私は負けず嫌いだから。


「やだ!!やる!!」

「ガキだなー、おめーは……意地張って失敗したら恥ずかしいだろ」

「うるさい黙れ!!」

「ぅおいっ?!カッターで人の事を指すな危ねーだろ!!」


カッターの刃を出したまま快斗を指せば、刃出し過ぎなんだよ、とカチカチと沈められた。


「全く。人をガキ扱いして、痛っ!!」

「大丈夫か?!」


ビニールに突っかかった刃を無理やり下へ下げると、押さえていた方の指をそのまま切ってしまった。

大して深くはないが、血がぷっくりと浮き出てくる。


「ったぁっ……」

「指かせ」


何するんだろう、と思いながら指を差し出せば、傷口をぺろりと舐められた。

「ひっ……!な、何すんの!!」

「手当♪」


にひひ、と笑う彼とは一転、私は顔に熱が集まり青子に助けを求めると、気づいた青子は顔より私の指に目が行った様で、保健室に絆創膏を取りに走って行った。

「だから言ったろ?恥ずかしい事になるぞって」

「こういうこと?!」

「ほら、おめー刃立て過ぎなんだよ」


そう言った快斗は私の後ろに回り、私の手の上から一緒にカッターを握ってビニールを切り始めた。何この共同作業。
恥ずかしい!!


私の後ろにある快斗の顔も赤い事など、知る由もなく。


(ま、こうして一緒にできたし、意地張ってる名前も可愛いからいっか)




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