頼れる彼氏?頼れない彼氏?
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「ぎゃぁああああっ!!!」

「えっ?!どうしたの名前………きゃあああああっ!!!」

「おいこら待て!どうした蘭!!」




出た。出てしまった。

ポアロでバイトしている帝丹高校2年生の私は見てしまったのだ。


店の中に本来いてはいけないあいつ

出来れば目にモザイクをかけたくなるようなその容姿。


叫べば棚の下にカサカサと入ってしまった。


安室さんは買出し中だし……蘭はこれを見て逃げちゃったし……小五郎さんは蘭を追いかけちゃったし……



「…………」



今店にいるのは、つまんなそーに片ひじついてストローをズーっと吸っているコナン君のみ……



「ちょっとコナン君見てないで助けてよぉ〜っ!!」


無言でだるそうに立ち上がった彼をカウンターの中へ入れると、棚の下を覗いてくれた。



「何もいないじゃない」

「いるってー!!もーやだー!!安室さん早く戻ってきてぇー!」



「どうしました?戻りましたよ」




声の主を見つければ、私の願いが叶った様に戻ってきた安室さんがいた。


神様だ〜っ…!!



「あむっ……あむっ…!!」



嬉しさと見てはいけないものを見てしまった焦りでうまく言葉に出来ない


ただ体は前者。

嬉しさの方が大きく抱きついてしまった。



「え?あむあむ?」

「ちがっ……!あそこ!あそこに!」



棚の下を指させば、私の横から顔を覗かせる安室さん。


「あそこが何ですか?」



安室さぁああああん!!
気づいて!!!


「安室さん!!ゴキブリー!!!」

「……やだなぁ。僕はゴキブリじゃないですよ?はは」

「え」



抱き着いた私からスルッと体を抜け出し冷蔵庫に買ったものを入れ始めたんだが…



天然か?!天然なのか?!


ていうか対応酷くない?!



「違いますって!!ゴキブリが棚の下にいるんですよー!!」

「あぁ。なら最初からそう言って下さいよー」



ティッシュを手に棚をずらし、ゴキブリを探し出した安室さんはかっこいい。

けどさ……


けど、あのでかいのをティッシュ?!

ティッシュで潰したらあれだよね?!


なんかグロイのが丸わかりになっちゃうよね?!




「ティッシュですか………」

「あ、いましたいました!……捕まえたっ!!」

「つつつつぶさないで下さいよ?!ティッシュでやめてくださいよ?!」

「してませんよ、ほら」

「いやあああああっ!!見せないでえええええっ!!!」



もう無理もうやだここからいなくなりたい!!


夢であってとしゃがみこむ。


もう捨てたのかどうしたのかわからないが安室さんの鼻歌が聞こえたので顔をあげると、手を洗っていた。



「もういないですか……?」

「いないですよ。怖かったね。おいで」



後光がさすような笑みで両手を広げられ、自然に体が安室さんを求める。


ぎゅっと抱きつくと、優しく抱きしめ返してくれた。



「安室さん〜〜っ……」

「ほんとに可愛いなぁ。名前さんは」

「……僕の目の前でやめてよね……」

「……あ。ゴキブリいた。」

「ええええっ!!どこですか!!どこ!」

「名前さんの後ろ」

「いやあああああっ!!やだやだやだ!とって早くとってぇ!!」

「ははっ。嘘ですよ。背中なんて言ってないじゃないですか」

「あー!もー!びっくりさせないでくださいよ〜……」



ひどい安室さんに涙が出てきた。


彼氏のすることじゃない。


最低だ……ぐすん。



「名前さん、すみません」



その言葉に、口を尖らせていた私が上を向くと、不意打ちでキスをされた。


「……っ……!!」



ふふ、と笑う安室さんにはやっぱり後光がさしていて、ずるい。


許すしかないじゃないか。



「その笑顔に免じて、今回だけ許します……」

「そういう優しい名前さんが大好きですよ。」

「〜〜〜っ!!休憩行ってきます…!!」

「ふふ、行ってらっしゃい」




不意打ちの大好きはもっとやばい。

顔が赤くなる前に、早く休憩に行かなければ。そんな焦りを胸に、店の奥へ入って行った。




「……ゴキブリってまさか僕の事じゃないよねぇ……?」

「違いますよ。ただ名前さんをいじめたかっただけです。いやー、反応が可愛いすぎてね。ついついいじめくなっちゃうんですよ」

「あはは……名前お姉ちゃんの事大好きなんだね」

「そりゃあもちろん、大好きですよ。」


愛ゆえに、いじめたくなってしまうんですよね。

すみません名前さん。
ほんとに大好きですよ。


ーENDー



「にしても……凄い飴と鞭だったね……」

「やだなぁ。コナン君までそんなに褒めないで下さいよー」

「……(褒めてねぇ。)」


名前が頼れるのは安室さんしかいねぇし……頼ったら頼ったでいじめられてるし……あいつも大変だな……はは……。



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