03
戻ってくると、何冊かのノートと1枚の紙、ハガキや封筒とたくさん持ってきた。
「なんかいっぱい来てるぜ?」
「ノートは多分今日早退したから」
「あーだからノート入ってたのか」
「蘭かな」
ノートを手に取りそれを開くと、今日の授業のまとめが書いてある。
やっぱり蘭のノートだ!
「やっぱり蘭のはわかりやすいなー」
テストも近いので、集中して見ていると快斗が1枚の紙を見て質問してきた。
「名前、ステージ発表眠れる森の美女に決まったのか?」
「そうだよ」
「主役なんだ……あいつと」
あいつと…?と思ったがノートに集中していた私は、うん。と適当に返事をした。
「…へぇ。主役やりてぇって言ってたもんな」
「うん!すごく楽しみ〜♪早くやりたい♪」
「…そ。俺帰るわ」
「えっ…?」
ノートを閉じ、快斗を見るととても冷たい目をしていて。
そのまま私が止める間もなく帰ってしまった。
「…快斗…」
なんで怒ってるの…?
今日は看病してやるからって言ってくれてたじゃん…
なぜ怒っているのかわからぬまま目線を落とすと、ベッドの上には一部分がくしゃりとなった紙。
その紙を拾い上げて見てみると、内容に驚愕した。
「眠れる森の美女、役決定…お姫様役、名字名前。王子様役…工藤新一?!」
眠れる森の美女は確か王子にキスをされて目が覚める。
もちろん劇なので、ほんとにキスをするなんてありえないが…
快斗の言う“あいつ”は新一の事だったんだ。
私、ちゃんと話を聞かないで楽しみとか言っちゃった…
最低だ。
だから快斗は怒っちゃったんだ。
「原因は私じゃんか…」
1人の家に響く声
ついさっきまで座っていた快斗の痕跡はあとかたもなくて。
弱っている時に来てくれた嬉しさが大きい分だけ、1人になった時の寂しさは倍に増える。
快斗になんて言おう
誤解を解きたい
でも、誤解ではない。
確かに相手役は工藤新一なのだから。
メールでは言い訳じみてしまいそうなので、とりあえず電話をすることにした。
prev|
next