01
「名前ー!!早くー!!」
「蘭待って!!ポアロ!ポアロ寄ってくれないと私お昼ご飯抜きになる〜っ!」
制服姿で足を少々動かし手招きをする、幼馴染みの蘭
ほんとにいつも遅刻して申し訳ない
でも、こんな私をいつも待ってくれる蘭が好き。
「名前さん!急がないとまた遅刻しますよ」
「あっ…安室さん!」
蘭のすぐ後ろに立っていたサンドイッチを持った安室さん
いつも私にお昼ご飯を作ってくれる、そんな彼に現在進行形で恋をしている。
ようやく蘭の元に着き、息を切らしながら安室さんに問う。
「なんで私が来たってわかったんですか…?!」
「名前さんの目印でもあるその大きな声が聞こえましたから」
言われた言葉は少々心に刺さるが、ニコリと笑うその笑顔に完全ノックアウト
その爽やかスマイルに乾杯…なんて思っていると、蘭に“見とれてないで早く行くよっ”と小声で耳打ちされた。
勿論、蘭は私の想いに気づいているから小声で言ってくれたわけで。
やばいやばいと安室さんからサンドイッチを受け取り、お礼を言って走ろうとすると、安室さんに引き止められた。
「名前さん!明日、デートでもどうですか?」
「でででっ…デート?!?!」
「はい、ドライブデートでも」
いきなりのデートのお誘いだが、断る理由など皆無。
名前は体力が満タンになる薬をゲットした。
効果音が鳴りそうな心を抑え、首を縦に大きく振った。
「行きます!行きたいです!」
「では、学校頑張って来てくださいね。また連絡します」
「はっ、はい!!待ってます!」
手を振ってくれる安室さんを最後に、前を向いた私のテンションはオーバーヒート
このままスキップでもして学校へ行ってやろうかと思ったが、それは蘭や周りの人達に変な目で見られそうなので抑えた。
「名前、良かったわね!」
「やったー♪明日楽しみ〜っ!!」
「ははっ。名前さん、声大きいですって」
ーーーー
「海、綺麗ですね〜……」
「今日は天気がいいので、特に綺麗に見えますね」
デート当日の今日、緊張もすっかり解けて海沿いをドライブしてきた私達
小さなパーキングエリアの様な場所に車を止めて、2人で波打ち際を歩く
これで恋人同士だったら、尚良いシチュエーションだっただろう。
そこだけが少しばかり悔しいが、このデートだけでも充分嬉しい。
「名前さんは、好きな人とかいるんですか?」
「えっ……?!」
ハードルの高い突然の質問に、戸惑うしかない私。
どうしようと狼狽えていると、“あ。綺麗な貝殻見つけましたよ”と拾って私にくれた。
「あ、ありがとうございます……」
ピンク色の、少しもかけていない綺麗な貝殻。
これを拾った安室さんの姿を思い出し、クスリと笑ってしまった。
安室さん、少し子供っぽいところもあるんだなぁ。
今、新たな発見をして嬉しい。
「いますよ、好きな人。凄く大人で、落ち着いていて、優しくって……でも、子供っぽいところもある人です。ふふ」
「なるほど……僕が当てましょうか」
「えっ……?」
ここで当てられては、確信犯じゃないですか……
そんな思いを胸に、ドキドキしながら次の言葉を待った。
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