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「もうあがって大丈夫ですよ」

「わーい!ありがとうございます!」

「じゃあ私はご飯でも作ってきますね」

「お願いします!」



はぁ。今日全然名前と喋ってねーや。
いや、今日に限らず最近か。


「黒羽君、ココア飲む?」

「ん」

「じゃあ入れるね!……そういえばこの間コナン君とご飯行った時にさ、」


は?飯?


「俺知らねーそれ」

「あ、うん。言ってなかったから……」

「あっそ」

「う、うん……?それでね、」

「ココア溢れてんぞ!」

「え?!わぁ!!ごめん……!」


ほんとイラつく。
名探偵がいなくなってもまだ名探偵の話かよ。


「もうさー、めんどくせーんだってそのドジなとこ!」

「ごっ、ごめん……」

「いい加減ちゃんと直せよ!お前ほんと助手とか向いてねーわ」

「えっ……」

「……もういいよ、助手しなくて」

「………」


こんな事言うはずじゃなかったのに。
今更後悔しても、出てしまった言葉は戻せない。
頼む、やだって言ってくれ。


「そうだね。ごめん、迷惑かけて」

「えっ……」

「帰るね。はい、ココア」


入れ直してくれたココアを俺の前に出すと、バッグを持ち出て行った。


「名前!!」


ガタリと席を立ち、愛しい名を呼んだ。
なぁ。やだって言えよ。


「名前……!!」


頼むから。


「待てって!!」


俺の、隣にいてくれるだけでいいから。


「名前……」


息をきらし後を追った先には、冷たい空気と先の見えない暗闇に、1本の細い道が通っているだけだった。


「くそっ……」


苦し紛れに吐く息は白く、儚く闇に消えた。
いつも名前を送る時、コケそうな名前の腕を掴んで、その腕が冷たくて上着を貸して、いつもありがとうって笑ってくれてた、そんな道。

名前がいない夜の外は、こんなにも冷たかったっけ。
こんなにも、暗かったっけ。



ーーーー


今日、名前は学校に来なかった。
青子が珍しいね、なんて言うもんだから、俺の不安が余計に煽られる。

屋上でボーッと過ごしているとあっという間に放課後になり、帰る準備をしていると携帯が鳴った。

慌てて開いた画面には、寺井の文字。


「どした?」

「ぼっちゃま……!!早く来てください!!名前さんが!!」


嫌な予感がした。


今までだるくて動かなかった体が嘘のように、早く、早くと足を早める。

俺の中のサイレンが、鳴り響いていた。




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