03
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着替えた俺はダイニングテーブルに腰をより掛け、手に持っている睡眠薬の小瓶を見た。


その奥のソファにもたれ、眠っている名前



ごめんな、睡眠薬飲ませて


実は予告時間はこれから。


向かっている途中、誰かに脇腹を撃たれた。


掠めただけだったが血が止まらず、雨によって風邪を引いた。


怪盗キッドたるものが、情けねぇ。



ため息を着き、目線を落として再び小瓶を見て思い出した。


かぁっと顔に熱が集まり、唇に手の甲を当てる



……キスをしたんだ


睡眠薬を飲ませる為とはいえ、泣きじゃくる名前を見たら自然と口を寄せていた。


あまりにも色気があったから。




回想に心臓を高鳴らせていたその時、テレビのニュースで我に返った。




『では、次のニュースです。怪盗キッドの予告時間まで残り僅かとなりました。』


「………」



画面の左上には、予告時間までのカウントダウン



時計を確認した。



「予告時間まで、あと少し…」



開いた窓の外を眺め、作戦を再確認しようとするも名前の事で頭がいっぱいだ。



もう少し………



もう少し待ってくれ名前



いつか話せる日が来るまで。



お前に迷惑をかけたくない




好きなんだーーー。









冷たい風が、私の頬を擦る


目を開けた自分に、眠っていたのかと理解した。



ふと風が来た方を見ると、外を向いて窓際に片膝を立てているキッドの姿



外に行こうとしている後ろ姿に、眠気が一気に引いて起き上がった。



“行かせてはいけない”と、脳に警報が鳴り響く




「だめ!!行っちゃだめ!!」





キッドに駆け寄り、後ろからマントを思いっきり引っ張ると、足を後ろに下げ向かい合わせになった。



ただただ、真顔でこっちを見るキッド




怒っているかもしれない

なんで?と思っているかもしれない


でも……

もう怪我をして欲しくない


ただでさえさっき応急処置をしたばかりなのに。


これ以上、やめて………




「行かないで…っ……うぅっ……」




また、涙が出てきた。


顔を両手で覆い隠す


今更遅いのだけど。



行かないでと子供の様に懇願するも返答はなく。


ふわっと風が来たと思うと、耳元で囁かれた。




「いつか、話します」





その言葉に顔を上げると、もうキッドの姿はなく、薄い煙だけがあたりに広がった。



「キッド…っ?」




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