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「上着とか、洗濯しちゃうね」



ひとまず落ち着き、聞こえているのか聞こえていないのかわからない彼に伝える


洗濯機のボタンを押して、彼が寝ているソファへ戻った。



いつも通りニヤリと笑って来てくれると思っていたのに。


いつもみたく聞いてよ



“今日は何色のバラがいいですか?”


って。


寂しくなるよ………



そんな思いで彼を見つめて、どれくらい経っただろうか。


洗濯終了の音に我に返った。



乾燥機能がついているから、あとは皺ができないようにかけるだけ。


全てをハンガーにかけて、倒れてきた時に床に落ちたハットもテーブルに置いた。




そしてまた、キッドの元へ戻る



苦しそうに唸っている彼

モノクルが邪魔そうで、外してすぐ横のテーブルに置き視線を戻した、その時だったーーー。




「えっ……?かい………と……?」




心臓がどくんと大きく脈打つ


脳まで伝わる様な脈打ち

周りの音が聞こえなくなるくらいの衝撃


今日一緒に帰った快斗の姿が、走馬灯の様に頭をよぎる。




「快斗……なの……?」



モノクルを外し、ハットもなく、部屋の明かりに照らされている彼は快斗にしか見えない。


幼馴染みをしていればわかる。



快斗なんだね………



何故か素直に受け入れられた。


根拠はないけど、なんとなく。

なんとなくキッドは快斗なのだと思っていた。


でも………


命を狙われていたのだと、傷を見ればわかる


死んでしまったらどうするの……?


例え悪いことをしていても、死んでいいわけじゃない。


命を失っていたら………


どうするのよ……………



そう思うと、涙が溢れた。


それは快斗の胸あたりにぽたぽたと落ち、それに気づいたのかゆっくり目を開けこっちを見た。


“大丈夫?”とでも言えばいいのに


言葉がでない


現状に、頭がついていかない


心の整理がつかない


涙が止まらない………



泣きじゃくったまま快斗を見ていると、ゆっくりと右腕が伸びて、私の左頬に触れた。


そのまま髪をかきあげるように私の後頭部に手を回しゆっくり快斗の顔へ引かれていく。


思考がうまく働かない私はしゃくりあげるばかりで、なされるがまま。


快斗も快斗で、潤んだ瞳で私を捉えて離さない。



そのまま快斗の顔に引き寄せられ、唇と唇が重なった。


その時、ようやく理解した。


キスをしているんだとーーー。




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