01
「今日の夕方、雨らしいよ!青子傘持ってきてなーい!」
「えっ?!そうなの?私も傘持ってきてないやー」
「快斗に傘借りようと思ったのに、あのバ快斗今日学校サボったしねー!」
なんて会話をしたけど、まぁ別に学校帰りだから濡れてもいいや。
別に快斗君と仲良くないから傘借りるわけにもいかないし。てかそもそもいないし。
てかもうびしょ濡れだし。
♪〜雨の中で濡れる体に、あなたが優しく寄り添ってくれるーーー
あ、この曲今の状況にぴったり。
まぁ寄り添ってくれる人はいないけど。
なんて思いながら歩いていると、視界の左上に透明のビニール傘が入った。
あ。追い越し間際の一瞬の雨宿りラッキー!
…え?なんか着いてくる……
歩いているのに変わらない位置にある傘に怖くなって、後ろを振り向かず早足で歩いた。
怖い……
やっぱり着いてきてる……?
傘の高さからすれば男の人。
男の人だとなお怖い。
イヤホンをして音楽を聴いているからか、周りの音もシャットダウンされていて怖さが増す。
「おいって……!おめー、傘なくて大丈夫か?俺こっから家近いからやるぜ?」
ちょうど曲が終わった直後に聞こえた声
思わず肩を跳ねさせイヤホンを外して振り返る、
と、
「…あ。快斗君……」
青子の幼なじみの快斗君
困った様な微笑んだ様な顔をして首を傾げる快斗君にちょっとずきゅんときてしまった。
いや、ちょっとずきゅんはおかしい
結構、かな。
「おめー傘持ってきてねぇんだろ?これ使えよ」
ん、と渡してくれたのは嬉しいんだけど……
「快斗君どうするの?」
「俺は家ちけぇからいーよ!青子にもう1本渡しちまったし!」
「いっ……いいよ!私も家近いし……!」
「可愛い女の子がズブ濡れで歩いてるっつーのに、それを無視して呑気に傘さしてる男がいるかぁ?いたとしても快斗君はそんな薄情な奴じゃありませーん!」
か、可愛いって…!
さすが女好きと言われてるだけあるなぁ。
ほんとにいいんだけどなぁ。
でもこのまま譲り合いするのも酷だし
「じゃあ、一緒に入らない?」
「えっ?!それ1番いい!!」
お。目キラキラしてる。
良かった。なんの気なく言ったけど、いざ入るとこの距離が少し照れくさいな。
「……」
「……」
うぁ。快斗君の事全然知らないから話す内容が無いよう。
なんて1人でオヤジギャグかましてる場合じゃない……。
てかもう1本あるならなぜその1本を私に渡して青子と相合傘しなかった?
あ、青子に渡しに行く為に来たからかな?随分優しい人だな。
あれ?でも青子と快斗君ん家とは逆の方向なのに……。
てかなんで今日学校休んだんだろ。
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