01
名前がこっちに来てから、もうすぐ1年が経とうとしていた。
相変わらず名前は俺をファンにしか思ってないのか、本気で好きなのかわからない。
はっきりするまで告白できない俺の情けなさも変わらずだ。
でもそれ意外、俺も、名前も、名探偵も変わった。
名前がブルーパロットで働き始め、俺の助手をする事で責任感の重さを認識させ、ドジを減らし、俺の最適の助手にさせようとした。
勿論、もうすぐ1年経とうとしている今現在、名前のドジが減って、いい助手になって活動してくれている。でも、その事で名前の傍にいてやれる理由がなくなった。
名前に対する一つの目的は果たしたはずなのに、何故か虚しさが襲う。
名前は、いい方向に変わったはずなのに。
「名前おねぇちゃん!」
「コナン君!今日も来てくれたんだ!相変わらず可愛いねー!ぎゅーさせてー!」
「いや遠慮しとくよ」
「なんでよ!!」
江戸川コナン、基、工藤新一。
名探偵は相変わらず俺がキッドということと、名前が助手をしている事に気づいていない。もしかしたら、気づかないフリをしているだけなのかもしれない。
どちらにせよ、あいつは名前を守ろうと、傍にいようとしている気がする。名前の事が好きだと見た。
名前は気づいていないが、名探偵の来る数が極端に増えた。そして時々優しい目をして、優しい笑顔で名前を見やる。
名探偵は守りたい人ができたからか、どこか変わった気がする。
柔らかくなったというか……
なんか、生き生きしてんだよな。
……俺はこの2人が原因で、悪い方向へと変わってしまった。
別に2人が悪いとか、そういう意味じゃない。
守る人がいらなくなった名前。
守っていた人がいなくなった俺。
これから守ろうとしている名探偵。
近いのに、何故か遠い存在で。
明らかに一緒にいる時間は名探偵より長いはずなのに。
名前が、名探偵の方へ行くのが目に見えてわかる気がした。
早く告白すればいい。
早く自分のものに。
でも、もし振られたら?
名前は完全に名探偵の方へ行ってしまうだろう。渡したくないという自分の意志が強いから、告白できない。
結局自分の事しか考えてねーんだよな、俺は。
「黒羽君ってば!!」
「ん…あ?」
「どうしたのさっきからボーッとして!ボーッて音出てるよ!!」
「るせー」
「考え事?」
「まぁな」
最近、おめーとの距離が遠い。
だから……明日ぐらい2人で……
「なぁ、名前」
「ん?」
「明日さ「名前お姉ちゃん!!お湯湧いてるよ!!」
「えぇ?!あ、ごめんちょっと待って黒羽君!!」
「……おう」
タイミングわる。
まぁ確かにお湯が吹き出しそうだ。というかもう吹き出している。
名探偵もわざとらしく間に入ってきた様子もなく、ただただタイミングが悪かった
あーなんかイラついてきた。
「あ、名前おねぇちゃんホームズ読み終わった?」
「読んだ読んだ!!あれ意外に楽しい!」
「意外にって……興味あったんじゃなかったの……」
「あ、あったよあった!あったけど読んでみたら予想以上にって感じで……!」
「ほんとかよ……」
「ほんとだってー!ね?だから次貸してよ!」
「じゃあ明日持ってくるよ!」
「明日も来てくれるの?!やったー!楽しみにしてるね♪」
……俺は完全に蚊帳の外。
最近まで俺とメインに喋ってくれていた名前は、いつしか俺の知らない話を名探偵とする様になった。
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