03
「濡れてねーか?大丈夫か?」
「あ、うん。私は大丈夫。それより快斗が………って……え?」
あれ?
私じゃなくスクールバッグに向かって話しかけている。
雷でも頭に直撃したのだろうか。
「頭大丈夫?」
「失礼だな!!俺はおめーに言ったんじゃねーの!」
「あ、ごめん、雷直撃したのかと。……え?じゃあ誰に……」
スクールバッグに目をやると、ひょっこり顔をだした仔猫がいた
「仔猫ちゃん!!昨日の子じゃない!!見つけたの?!?!」
「探したぜ、木の下にいたよ」
見つかって良かった。と仔猫を見て微笑む快斗の足元は泥だらけで。
きっと必死で探してくれたんだ。
仔猫の為に。
私の為に。
「快斗…っ!!」
「わっ!!名前ちゃんったら積極的〜」
ぎゅっと抱きついた快斗の体はひんやりと冷たかった。
傘なんて持ってないじゃない。
嘘つき。
「ありがとう、快斗……。温かいココア用意して待ってるから、仔猫ちゃんと一緒にお風呂入っておいで。」
「名前が先に入れよ。風邪ひいちまったら大変だぜ?」
「やだ。快斗が入らないと入らない」
「ったく。じゃ、ちゃっちゃと入ってこねーとな。」
ちゅ、とキスをして濡れた服を私に預ける快斗はまるで夫の様
新婚夫婦みたいで嬉しい。
ちょこちょこ泊まりに来る快斗の服はもう用意してあって、それを脱衣所に置いた。
「仔猫ちゃんの名前、どうしようかな」
なんてウキウキしながらココアを作ると同時に思い出す、青子のヒーローと言う言葉。
困った時、助けに来てくれるだけがヒーローじゃない。それは義務だから。
困った時、傍にいてくれるのもヒーローだ。それは義務だけじゃなく、愛の篭った行動だから。
それをなんなくこなして見せた快斗は、例え怪盗だとしても、私にとっては立派なヒーローだ。
ヒーロー、なんて言葉はガキくさいかもしれないけど、ガキくさい快斗にはぴったりな言葉なのかもしれない。
「kid the Hero……なんてね。」
「お呼びですか?お嬢さんっ♪」
「げ」
ーENDー
「名前、外散歩しよーぜ」
「何言ってんのよ2人ともシャワー浴びたばっかなのに」
「これ見ても?」
「えっ……わぁっ!!晴れてる!!綺麗な星!!快斗、外行こう!!」
「ははっ。ったく、可愛い奴」
そうだ。
仔猫ちゃんの名前はソラにしよう。
昨日今日で色々な表情を見せた宙
その日にやってきたソラ
そして1匹と2人で、空を見よう。
「大好きだよ」
「俺も大好きだぜ名前。……って猫に言ってんのかよ!!」
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