02
「では、私はもう行きますね」
「え?もう?」
「青子さんの所へ行くので」
「……本気とか言った割には随分さっぱりしてんね」
「もう、貴女の事は諦めましたから。きっとこれから何も変わらない。今の貴女の瞳に、書いてあります。“終わり”と。」
「そっ……!そんな事思ってないよ!」
そんな事思っているはずがないのに。
だって、少しだけ、寂しいと思ったから
私から言ったけど、あまりにもスムーズ過ぎて、何か納得がいかない。
「では、どう思ってるんですか?」
「……なんとも思ってない」
「……そうですか。では、名前嬢。これからは遠くから貴女の幸せを願って……」
ポンッと軽い音と共に出た花は、バラではなく向日葵だった。
「あれ、いつもはバラなのに」
「太陽といえば向日葵ですよ」
「いやそうだけど……」
「この意味がわかった時、貴女は完全に魔法にかかるでしょう」
「あなたいつの間に先生から魔女になったの?」
「……私は男ですよ……」
何故か、悲しそうに笑った気がした。
私の頬にそっと、布越しの暖かさが伝わる。それと同時に、唇に柔らかさと、微かなリップ音が耳に甘く響いた。
「なっ……!!!」
「さようなら、名前嬢」
ポンッと軽い音がしたと思えば、もう彼の姿は無く、きれいな夜空に月が私を照らしていた。
「……嫌とか、思ってないから」
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