03
「そういえばその人さ、怪盗キッドになんとなく似てるって名前言ってたよね!実はキッドなんじゃない?あははっ」
「怪盗キッドに直接会った事無いし、テレビとか新聞で見てなんとなく思っただけだよ」
「それに怪盗キッドが昔サッカー少年でした、なんておもしろい話あったら壁叩いて笑っちゃうわ!」
「いやたいして面白くないし、なぜ壁…」
「そういえば今日、怪盗キッド出るらしーから見に行って確認しようよ!」
「えー興味無いしもうあの人の事好きじゃないからいいよー」
「……前言撤回!私が見たいから付いて来て!!暇でしょ?」
「おい勝手に決めつけるな」
「おねがーい!」
まぁ、暇人が手を合わせて懇願してくる親友の頼みを断る理由も無く、ため息とともにOKすると手を上げて喜んだ。
私のことを考えてなのか、本当に親友がキッドを見たいのか、どちらにせよ暇人の私にはちょうどいい暇つぶしだろう。
ーーーー
「ladies&gentleman!!」
「きゃーっ!!かっこいい!ほら、名前も!きゃーって!」
「きゃー」
はぁ。こいつ、自分の為だな。
「あ、ちょっと新一ーっ?!」
「わりぃ蘭!園子とそこにいてくれ!キッドを追ってくる!」
その会話がすぐ後ろで聞こえ、振り返るとその新一君とやらは私のすぐ横を風の如く走って通り過ぎて行った。
「今の工藤君じゃない?」
「え?」
「工藤新一君。名高い高校生探偵らしいよ?確かあの人もサッカーやってたらしい。Jリーグに行けるくらいの腕前を持ってるらしいけど、私はキッドにしか興味無い」
「へー」
サッカーという単語に反応したけど、サッカーやって人なんてたくさんいるし、別に私もたいして興味無い。
キッドにも興味無いけど。
親友がキャーキャー言っている中、後ろでさっきの女の子達の会話が聞こえた。
「ほんっとあんたの旦那は獲物を見つけたら妻をほったらかしにして走って行っちゃうのね!」
「だから旦那じゃないってばぁ!」
お、こういう会話は結構好きだ。
見ず知らずの人だから面白い。
キッドを見てるよりよっぽど面白いぞ?
「もー工藤君鈍感なんだからさっさと告白しちゃいなさいよ!!」
「だめよ……。新一には、好きな人がいるんだもん……」
なんだ、付き合ってないのか。
それになんだか聞いてるこっちまで悲しくなりそうな会話は食わぬ。
少し離れよう。
まだ騒いでいる友達を置いて、少し離れたベンチに座った。
居場所はあとでメールしておこうと思った時、友達がどこ行ったかと思った!と走ってきた。なんだか焦っている様子。
「ごめんごめん、ちょっと人多くて嫌になってさ、それよりキッド見なくて「ちょっと!!」
「え?」
「あんたが昔着てたユニフォームの色、どんなんだった?!」
「えっ……ユニフォーム気になるの?写メ確かあったはず……」
「いいから早く!!色だけでいいから!」
そんな形相を変えてどうしたのだろうか。慌てる親友に私も焦りが移り必死に思い出す。
「赤と……青……あと白も入ってた!」
「せ、背番号は?!」
「5だけど……」
「あの好きな人の背番号、10じゃなかった?!」
「あれ、どうだっけ……」
「思い出して!!」
あの人の背番号……
背番号……
ーいーから座れ。腰の骨変形しちまうぞ
ーそ、それは嫌です……
ーははっ。だろ?
良く見えなかったけどあの時に一瞬視界に入った番号……
左に偏ってた1……
「10番だ!!!」
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