06
「黒羽君!」
「バーロー!何やってんだよ!探したんだぞ!」
むっ。
私の声も聞かず楽しそうに離れて行ったのはそっちじゃないか。
元はと言えば私が悪いのかもしれないけど、ちょっとそんな言い方されると腹立つな。
「いなくなったのは黒羽君達の方だよ!呼んだのに、楽しそうに先に行っちゃうんだもん!!」
「えっ……」
「すぐ電話したのに気づいてくれないし、こんなんじゃ私いない方が良かったじゃん!振るつもりなら、わざわざ私を呼ばなくても良かったんじゃないの?!」
「名前……」
せっかく青子と2人で私の分も買ってくれたのに……
こんな事になるなんて思わなかった。
言うつもりもなかった。
でも、不満が止まらない。
「黒羽君にとってはせーせーするから思い出になるかもしれないけど、私にとっては最後の大事な思い出なの!大好きって言える最後の日なの!」
「ちがっ「あぁ、何?それとも最後は最後らしく悲しい思い出にさせたいの?!それは大きなお世話をどーも!!」
「人の話を聞け!」
「っ?!」
その瞬間、目の前が真っ暗になった。
包まれるような暖かさに、抱きしめられてるのだと気づく。
見上げれば、怒っている様な、悲しい様な顔をして私を見てくる黒羽君。
「黒羽君……ここじゃ恥ずかしい……」
「あ、わりぃ……」
公衆の面前では、学校で馬鹿でかい声で愛しの黒羽君と呼んでいる私でもさすがに恥ずかしい。
でも、少し落ち着く事はできた。
「あっちで話そうぜ」
「わっ……うん……」
腕を引かれ、少し離れた山の上に2人で登った。
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