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「おめーはほんと幸せそうに食うよな」


彼はそう言って、優しく微笑んだ。


「だって美味しいんだもん♪」


ほっぺが落ちそう♪






……と、隣で言う青子。
そう、私はこの黒羽君と青子のやりとりの傍観者。

今3人でカフェにきて、パフェを食べている。

カフェでパフェ。ちょっと字似てない?

……とかこんなこと思ってるから黒羽君にアピールしてもだめなんだよなぁ。

いつも大好きだよと言ってるのに、流されてしまう。ひどくない?


私が青子みたく食べてもそんなこと言ってくれない癖に。

とか思いつつ、やってみる。

満面の笑みで美味しそうに食べてみた。
いや、美味しいんだけどさ。


「……!!名前……」


お、気づいた気づいた……



「ん〜?♪」

「気持ちわりーんだけどその顔」

「え」

「それにおめーでぶるぞ?縦に伸びてぇんじゃねーの?それじゃあ横に伸びるぞデーブ!!」


ひ、ひどい……!!


「わ、私の名前はデーブじゃないもん!!日本人だもん!名前だもん!!」

「……おめーそれ本気で言ってんのか?本気のギャグならお笑い芸人失格だぞ」

「芸人狙ってないわ!!」



青子は隣で笑ってるし。

私なら手を叩いて歯を見せながらガハガハ笑っているところも、青子は口元に手を持ってきて、あははっ。とお上品に笑っている。

こ、これが格差と言うのか……!
ぐぅ……!


私の『黒羽君をキュンとさせちゃうぞ☆大作戦』は一瞬にして敗戦に終わった。


どーすればいーんだろ。
なんて考えながら食べてると、おめーはその顔が1番だと言ってくれるもんだから、真顔で食べてみる。

“こえーわ”
で、終わった。

もうどういう顔で食べてればいーのさ!



「あ、名前の携帯鳴ってるよ?」

「ん?」


あらほんと。
母からだ。


「ありがと青子!」

「うん!」

「はいーもしもーし」

『今大丈夫?』

「大丈夫ー」

『今度、あの大きな公園で花火大会あるでしょ?あれの入場チケット2枚貰ったんだけど、私とパパ別に行きたくないし、あんた誰かと行ってきたら?』

「あの大きな公園……」

『えーほら、毎年やってるじゃない。えっと……なんだっけ?ほら、あそこ!』

「あそこでしょ?わかってるよ!名前出てこない!あそこね!」

『じゃあもう“あそこ”でいーや。行く?2枚あるよ』


あそこで通じる私と母。
そして名前がわからないが故に“あそこ”と名付けてしまうあたりほんとに親子だなと思う。


「んー一応貰っとくかな。いつ?」

『明日』

「明日?!急だな!」

『じゃああげるねー!ばいばーい』


おいおい。
話を無視するんじゃない。

しかし何も考えずに貰うとは言ったものの……
3枚欲しかった。

2枚か……

あそこの花火大会のチケット、何故か8000円もするんだよね。

8000円もかけるのはちょっと高校生的にはきつい……。

かと言って、青子と行けば黒羽君が仲間はずれだし、黒羽君と行けば青子が仲間はずれ。

他に誘う友達もいないし……




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