01
「おめーはほんと幸せそうに食うよな」
彼はそう言って、優しく微笑んだ。
「だって美味しいんだもん♪」
ほっぺが落ちそう♪
……と、隣で言う青子。
そう、私はこの黒羽君と青子のやりとりの傍観者。
今3人でカフェにきて、パフェを食べている。
カフェでパフェ。ちょっと字似てない?
……とかこんなこと思ってるから黒羽君にアピールしてもだめなんだよなぁ。
いつも大好きだよと言ってるのに、流されてしまう。ひどくない?
私が青子みたく食べてもそんなこと言ってくれない癖に。
とか思いつつ、やってみる。
満面の笑みで美味しそうに食べてみた。
いや、美味しいんだけどさ。
「……!!名前……」
お、気づいた気づいた……
「ん〜?♪」
「気持ちわりーんだけどその顔」
「え」
「それにおめーでぶるぞ?縦に伸びてぇんじゃねーの?それじゃあ横に伸びるぞデーブ!!」
ひ、ひどい……!!
「わ、私の名前はデーブじゃないもん!!日本人だもん!名前だもん!!」
「……おめーそれ本気で言ってんのか?本気のギャグならお笑い芸人失格だぞ」
「芸人狙ってないわ!!」
青子は隣で笑ってるし。
私なら手を叩いて歯を見せながらガハガハ笑っているところも、青子は口元に手を持ってきて、あははっ。とお上品に笑っている。
こ、これが格差と言うのか……!
ぐぅ……!
私の『黒羽君をキュンとさせちゃうぞ☆大作戦』は一瞬にして敗戦に終わった。
どーすればいーんだろ。
なんて考えながら食べてると、おめーはその顔が1番だと言ってくれるもんだから、真顔で食べてみる。
“こえーわ”
で、終わった。
もうどういう顔で食べてればいーのさ!
「あ、名前の携帯鳴ってるよ?」
「ん?」
あらほんと。
母からだ。
「ありがと青子!」
「うん!」
「はいーもしもーし」
『今大丈夫?』
「大丈夫ー」
『今度、あの大きな公園で花火大会あるでしょ?あれの入場チケット2枚貰ったんだけど、私とパパ別に行きたくないし、あんた誰かと行ってきたら?』
「あの大きな公園……」
『えーほら、毎年やってるじゃない。えっと……なんだっけ?ほら、あそこ!』
「あそこでしょ?わかってるよ!名前出てこない!あそこね!」
『じゃあもう“あそこ”でいーや。行く?2枚あるよ』
あそこで通じる私と母。
そして名前がわからないが故に“あそこ”と名付けてしまうあたりほんとに親子だなと思う。
「んー一応貰っとくかな。いつ?」
『明日』
「明日?!急だな!」
『じゃああげるねー!ばいばーい』
おいおい。
話を無視するんじゃない。
しかし何も考えずに貰うとは言ったものの……
3枚欲しかった。
2枚か……
あそこの花火大会のチケット、何故か8000円もするんだよね。
8000円もかけるのはちょっと高校生的にはきつい……。
かと言って、青子と行けば黒羽君が仲間はずれだし、黒羽君と行けば青子が仲間はずれ。
他に誘う友達もいないし……
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