03
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「んで、ここが体育館」
「なるほどなるほど」
今更ながら、こんな夕方まで付き合わせて申し訳なかったな、と思う。
結構細かく教えてくれて、教室を出てからなかなか時間が経っている。
キッドの仕事もあるのに……
今日はないと思うけど。
「なんか付き合わせてごめんね?こんな遅くまで……黒羽君忙しいのに」
「え、忙しくねーよ?」
「だってほら、キッドの仕事とかもあるじゃん?……!!!」
やばい!!
言ってしまった……!!
「え……?って俺はキッドじゃねぇ!」
「はは……」
言ってしまおうか。
トリップしてきた事を。
初対面の私の話を信用してくれるかはわからないが、漫画を見て全てを知っている私には情報量がある。
これを言っても信用されないなら……それは仕方ない。
これから色々隠してここで生きて行くなら、最初に話しちゃった方がいい。
「ねぇ、知ってるよ、黒羽君が怪盗キッドだって。」
「だーから俺じゃねぇって」
「……怪盗キッドを始めたきっかけは、高校2年生になってから、お父さんの黒羽盗一さんのポスターが鍵の部屋を見つけた。そこにはキッドの部屋。盗一さんが亡くなった理由がマジックショーの事故じゃなく、謎の組織がパンドラを目的としてやった事だと寺井さんに聞いて判明した。黒羽君はそのパンドラを組織より早く見つけ、破壊する事を決意して宝石を探している。そうでしょ?」
「なっ………」
「トリップ前に、漫画で見たから。この世界は漫画だったの。コナン君の事も知ってるよ」
「トリップ?」
「私は異世界からトリップしてきたの。漫画のこの世界に」
「……ほんとか?それ」
「ほんとだよ。コナン君の事は、黒羽君がどこまで知ってるかで言えるか言えないか判断するけど」
まだ黒羽君がコナン君の正体を知らないかもしれないし。
なんにしろ名探偵コナンとまじっく快斗が混ざってる。
よくわからん……。
「……全部知ってる」
「……ほんと?」
「俺が嘘つく様に見えるか?」
「……見える」
「おい」
まぁ知らなくてもいずれ知ることになるだろうし。
知ってるって言ってるし。
「コナン君の本来の姿を知ってる。東の探偵、工藤新一君。西の探偵服部平次君の事も、イギリスで活躍してるけどばあやが勝手に日本からの依頼を受けて時々日本に帰ってくる白馬探君の事も。全部」
「………」
「ちなみに私は探偵でも、怪盗でも、組織の一員でもなんでもないただの一般人。通報なんてしないから安心して」
「………」
「もひとつちなみに、キッドの助手、寺井黄之助さんも知ってる。ビリヤード店ブルーパロットの経営者でもある。……これで信じてくれた?」
「お、おう……なんとなく……」
「良かった〜!」
信じてくれたんだ……!!
「おめー、俺以外に口外すんなよ?」
「わかってるよ!あ、あと犯人の犯行手口とか何月何日に何が起きるとかそんなとこまで覚えてないから安心して♪」
「……そこまで来たらもう神だな……」
「ほんとねー!あははっ」
とりあえず信じてくれたから良かった。
この話で少し仲良くなれた気もするし。
なんかもっと仲良くなりたくて、このあとカフェでもどう?奢るから!なんて逆ナンみたいな事を言ってしまった。
「んー……女に奢られるのは趣味じゃねーな。行こうぜ!!」
「えっ!!そんな……ちょっと……!」
逆に腕を引っ張られ黒羽君と近くのカフェに着いた。
互いに飲み物を頼み、私の話を詳しく聞かれた。
トリップ前の事や今までの経緯など話してるうちに、キッドファンだとバレた。
やっちまった。
その後もキッドや黒羽君の魅力についてコーヒーをお代わりするほど喋っていると、なにやらくすくす笑っている様だ。
「黒羽君、何笑ってるの?」
「ははっ。おめー俺の事好きだろ?」
はっ?!
「えっ……なんで?!」
「俺より俺の事知ってんじゃねーかってくらい話してくるし」
私はなんてマヌケなんだ!!
本人に本人の魅力について語るなんて!
「ごごごごめん!!」
「なんで?別に謝る事じゃねーじゃん。嬉しいよ。でも俺はもっとおめーが知りてぇし、まずは友達からよろしく!」
手を差し伸べられ、握手した。
しょっぱなからやんわりフラれたが、当然といえば当然の結果だし、何故かたいして傷つかない。
黒羽君の優しい言い方もあるだろうが、ポジティブシンキングの私が味方する。
これからもっと仲良くなろー♪
「よろしくね!黒羽君!」
ーEND?ー
黒羽君が奢ってくれた+アドレスゲット!!
さっそく、今日はありがとうとメールすると、こちらこそありがとうな、白の名前ちゃん♪と返ってきた。
下着をしばらくネタにされるらしい。
ちなみにカフェから出る際にスカートが捲れて下着が見えそうだったのを、こっそり直してくれた事を後から聞かされ顔がリンゴになった。
こんなドジな私でも、あの願望は止められない。
もと仲良くなったら、お願いしてみよう
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