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「もう来月から高3だー」

「なんか早いね。そういえば高校入学した時にさ、あの人も同じ高校だったらいーなーって期待してたけど、違ったよねー」

「あの人?」

「えっ?!忘れたの?!」

「あぁ!あの人?なんか会ったのあの日一度きりだし、名前もわかんないし、なんか記憶があやふやになってきててさー。もう好きじゃないのかなーって」

「まぁ、中学入りたての時の話だしねー」



高校2年生も終わる今。
忘れかけていたあの人。
あの日
あの時
あの場所で。


たった一度きりの出会いに、私の心臓は凄いスピードで動いていたのに。


もう、忘れかけていた。

あの人は今ーーー。












「じゃあ解散!!もうお前らは小学生じゃないんだから、明日からもっとビシバシ行くぞー!」

「「「はいっ!!」」」

「あと名字は残れ」

「え?はい」


男勝りな私は小さい頃からやっていたサッカーをやるべく、中学でサッカー部に入った。

みんなぞろぞろ解散する中、私だけが呼び出され1人ポツンと先生の前へ。
原因は多分……


「足の怪我、大丈夫か?」

「大丈夫です。くじいただけなので」

「見せてみろ」


そう言われ右足の靴下を下げ、見せると自分でも驚くほど青紫になっていた。
うーんこれは見ない方が良かったかもしれない。


「ひどいな。親御さんに迎えに来て貰えないのか?」

「二人ともまだ仕事中なので無理だと思います」

「そっか……じゃあ俺が地下鉄までなら送れるが、そうするか?」

「すみません、ありがとうございます」

「よし、じゃあ車乗って待ってろ。片付けてくるわ」

「ありがとうございます!」


頭にポンと手を乗っけられ、先生が片付けに行ってる間に車の助手席に乗り込んだ


少し待っていると、片付け終わった先生が車に乗り込み地下鉄まで送ってくれた。


「すみません、ありがとうございました」

「少し部活は休んだ方がいいぞ」

「はい」

「じゃ、ここまでで悪いな」

「いえ、とんでもないです!」


ドアを閉めると笑顔でひらひらと手を振ってきたので、先生に手を振っていいものかと思いながらも笑顔で振り返す。


その後地下鉄に乗り込むがまぁ時間帯もあり人はたくさんいる。
ぎゅうぎゅう詰めとまではいかないが、座る席はない。

正直足が痛いが立つしかない為、大きく重たいエナメルバッグをさげながら必死に吊革を掴んでいた。

その後携帯をいじっていたが、ふと目の前の座っている人に目をやるとサッカー少年団なのだろうか、それとも部活で着ていたのだろうか、同じ歳くらいの男の子がサッカーのユニフォームを着て小説か何かを読んでいた。

サッカーのユニフォームで小説読むなんてちょっとシュールだなぁ、なんて思ってると、パチッと目が合い瞬時に逸らす。


向こうはまじまじとこっちを見ている様で怖い。こっち見んなよって思ってるのかなぁなんて思うといたたまれなくなり、完全に俯いた。

すると大きなため息とともに、本をパタンと閉じた音が聞こえた。

やばい、キモイとか言われるかも。




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