02
「キッド!!」
「名前!これ使え!」
小さな隙間から渡された細い針のようなもの。それを受け取り、キッドの指示通りに動かして行く。
早く……早く……!!
「開いた!」
その言葉と同時にキッドが屋上へはいあがる
「行くぞ名前!」
「うん!!」
2人で足を動かした時、屋上のドアが壮大な音をたてて開いた。
「……!!」
身分を隠している為声は出せないが、あれは……
「よぉ。キッド」
コナン君……!!
「これはこれは。2度もお会いできて光栄ですね、名探偵さん」
「……そいつは?」
「!!」
警備の服を着て、長い髪をしまって男になりきっているが、バレてないだろうか。
顔が見えない様俯き、伊達メガネでごまかす。
「人質ですよ。もしもの為に、ね。名探偵は手強いですから、こうでもしないと」
後ろからぎゅっと片腕で抱かれ、場に似つかわしくない心臓音が私の鼓膜に響く
きゃっ♪
と、少しだけ思うことにした。
「名前……腕から逃れるフリして後ろへ走れ。俺が後を追ってお前と逃げる。いいな」
小声で言われ、頷く変わりにキッドの腕に添えていた手にぎゅっと力を込めた。
行け、という合図に私はキッドの手を振りほどき後ろへ走る。
「おっと……」
「警備員さん!こっちだ!こっちに来い!」
私が錯乱して後ろに走ったのだろうと勘違いしたコナン君が、必死に私を呼び止めようとする声が聞こえる
それでも私は後ろへ走り続け……
ええっ?!
待ってこれ下に落ちるじゃん!!
えっ?!落ちろってこと?!
死ねって事なの?!
「ぎゃっ」
どうしようと思っていたからか、こんな時に私のドジっぷりが発動した。
何にもないコンクリートにつまずきコケたのだ。
それでもなるべく声を抑えた私を誰か褒めて欲しい。
「くそっ……!何やってんだ……っ」
走って来てくれたキッドが私を起こそうとすると、ここぞとばかりに中森警部やコナン君達に囲まれてしまった。
中森警部はいつの間に来たんだ。
「ここまでだキッド。人質を開放して銀のブレスレットをつけてもらおうか」
「銀のブレスレットなど私には勿体無いですね……」
「おめーにはこれがお似合いだよ」
私の体で手を隠していたキッドは、袖から何か出しているのが見えた。
きっと、煙幕か何かだ。
気づかない振りをし、そのまま黙って下を向き続けた。
「うわっ!」
「くっ……!」
その声と目の前に放つまぶしい光に顔を上げると、閃光弾から光が出ている様だ。
私も眩しくて目を細めた瞬間、キッドの腕に力が篭り、そのまま端ギリギリまで移動させられた。
なんだこれズルズル引きずられている
あ、今重ってーな…って呟いたでしょ?
聞こえてたんだからね。
「待てキッド……っ!!」
「では、次の逢瀬に………」
え?
次の逢瀬にって………
こっから落ちる気?!
え、やだ体傾いてる!!
「……っ……!」
「大丈夫だから、力抜け」
こっそり言われたがこれは……
無理っ!!
無理無理無理むりぃいいいいっ!!
きゃぁああああっ!!
耳元でひょうひょうと風の音が鳴り、髪の毛で前が見えない。
帽子も伊達メガネもどこかへ吹っ飛んでしまったようだ。
「もっももももう声出していいいいいっ?!」
「おー!もう大丈夫だ!」
その瞬間、ふわっと体が浮遊する感覚になった。見る限りハングライダーを開いた彼にお姫様抱っこをされているようだ。
まじで死ぬかと思った。
こんな夢の一つであった黒羽君のお姫様抱っこもこの状況じゃ嬉しくもなんともない。
「あれ?悲鳴あげねーの?」
「あげそこなったよ」
「まぁ、あげねー方が楽だけど」
「心の中では大絶叫だったけどね」
「だろーな。顔めっちゃ強ばってたもん」
「見ないでよ……っ!」
「んだよじゃあおめーだけ置いてくれば良かった」
「嘘ですごめんなさい。助けてくれてありがとうございますキッド様」
「よろしい」
……なんで私謝ってんだ?
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