01
私は今、かっこいい。
きっとかっこいいことをしている。
ちょっと自慢したい。
『次は?』
「次は……右にあるドアの奥に隠し扉がある!その部屋に空気講があるはず!そこから出れない?」
園子ちゃんには申し訳ないけど、今鈴木財閥のセキュリティ管理を乗っ取り、ドアのロックを解除。逃げているキッドの逃走ルートをこのインカムで促している。
『おいおいこれ登ってけってか?!』
「屋上に向かう空気講だよね?それしかないから頑張って!」
『了解』
うわぁ、私、お手伝いしてる!
「きゃーっ!!夢が叶った叶ったー!」
『うるせーこっちにまで聞こえてる!…はぁっ……鼓膜破れる……はぁっ』
「息上がってるよ?なんかエロいね。ぐへへ」
『るせー女だろおめー…はっ…気持ちわりぃ事っ…言ってんじゃねぇ』
「もう何言われても今の私は幸せです」
『脳内お花畑やろー。あ、おい!』
「どうしたの?」
『これ外側から鍵かかってんぞ?!中からじゃ隙間が狭すぎて手入んねぇ!後ろは追っ手がもう来てるはずだ!どうする!』
「えっ?!そんなはずは……」
なんで?
なんでだろう……
画面には載ってなかったはず……!
このままじゃ捕まっちゃう!
どうしようと頭をフル回転させ、パソコン画面を改めて目を細めて見る。
……これは!!
「載ってたー!!表記ちっさ!!見えなっ!蟻じゃんこれ!ねぇ見て寺井さーん!これ小さすぎない?!あっはは!」
逃走ルートに蟻ぐらいの小さな鍵マークを発見。見逃してしまっていたわけだ。
これ次郎吉おじさん見えるのかな?
『んにゃろー笑ってねーでさっさとどうにかしろ!』
「あ、そうだった…!どうしよう寺井さん!」
「直接行って開けるしかないですね……警備の格好をして10皆までエレベーターを使い、そこから外にある梯子を登って屋上へ。そこで隙間からぼっちゃまにピッキング材料をもらい、教えて貰って開けて下さい!」
そ、そんなこと……
「……私にできるかな……」
「できます!2人で行くわけにも行かないので、ここは名前さんの腕の見せ所ですよ!」
いつもドジな私にできるのだろうか
私が少しでも遅ければ、2人でお縄についてしまう。
それだけは……キッドだけは絶対にさせたくない。
寺井さんに行って貰った方が……
『名前!!お前ならできる!!来い!考えてる暇はねーぞ!』
「!!」
考えてる暇はない……
でも、できる自信がないよ……
どうしようっ……
『……なぁ名前、俺がお前を助手にしたんだ。絶対できるよ。俺を信じろ。何かあっても、俺がおめーだけは守るから、な?俺に、会いに来いよ』
「会いに……助けに……行く!!」
『よし、偉いぞ!じーちゃん、聞こえるか?!』
インカムから漏れるほど聞こえているが、ちゃんと聞こえる様に寺井さんにインカムを渡した。
2人で何か喋ってる間、私は改めてパソコン画面を睨みつけ、ルートを確認。
軽く助手をやりたいなんて言うもんじゃない。凄く、凄く重たいんだ。そう感じながら。
「名前さん、これを着てキッドの元へ」
いつの間に持ってきたのか、目の前には警備員の制服。
『名前!急げ!!』
インカムから小さく聞こえたキッドの焦っている声。
私がやらなきゃ!!
「行ってくる!」
急いで制服に着替え、ビルの屋上へ
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