05
「そんな人を目の前にしても……私は黒羽君にしかドキドキしないんだよなぁ。変かなー?」
……え?
「それ、どういう……」
「私はキッドの大ファンだよ!ファン第一号に任命されたいくらい!キッド大好きクラブのトップの人になりたいくらい!」
「あ、あぁ……」
「でもただのファンじゃ、黒羽君と一緒にいないと思わない?黒羽君に大好きって言わないと思わない?私は、黒羽快斗君が好き。両想いって思って……いいかな」
段々声が小さくなって、真っ赤な顔して俯いた名前を、どれだけ愛おしく感じただろうか。
そっか。名前はキッドを見守りながら、俺を好きでいてくれたんだ。
見守られていたのは、俺の方だった。
「あたりめーだろ。ほんと、可愛い」
寒いのに、顔を真っ赤にして暑いと言いながらひらひらと手で顔を仰ぐ名前。
そんなんで風はこないだろうに。
可愛すぎ。
「ははっ。照れてんな?」
「あっ、あああ当たり前でしょっ!こんな本気で言ったの初めてだから……」
「来いよ」
両手を広げると、いつもの名前ならやったー!とか言いながら来そうなものだが、今は違った。
「あ、暑いからいいよ……」
「そんな手真っ赤にして?」
「暑いの!もー今日何度?夏なんじゃないの?!」
「照れてるからだろ。さみーよ」
「うわ冷静!いいの!!」
そう言った名前は真っ赤な手を真っ赤なほっぺにつけて、手をあっためていた。
その顔、もっと赤くしてやる。
「名前」
「ん?」
名前の目の前にしゃがみ、前のめりで両手を地面につけて、キスをした。
「んっ……黒羽君っ……?!」
「へへ、顔りんごみてー」
やっと、やっとキスできた。
近いようで遠かった距離を、やっとここまで縮める事ができた。
「は、恥ずかしい!!どうしよう!!死にそう!!嬉しい!!幸せ!!ちゅ、ちゅーしちゃった!!」
うっ……
そこまであからさまに喜ばれるとこっちまで恥ずかしくなる……
「バーロー……」
「そうだ!!私こっそり黒羽君のマジック寺井さんに教えてもらってたんだ!!」
え、切り替え早くね?
「見ててよー?」
「お、おう…」
手をぐーにして俺の前に差し出すと、力を込め始めた。
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